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第42話

「理音、今日部活は?」 「行けない。仕事入ってるから」 「そっか」  それでも、相変わらず昂平は俺と一緒に居てくれている。今もいつものポジションで弁当を広げて……でも、能天気におかずの交換はさすがにできなかった。 俺は明らかにおかしい。なのに、昂平は気付かないフリをしてくれている。 ……なんで? それを確かめる勇気すら、ない。 「あのさ、昂平」 「何だ?」 「……なんでもない」 「なんだ、言えって」 「言うこと忘れた」 「……んじゃ、思い出したら言えよ」 「うん」  口を開けば、こんな調子。信じられないことに、この状態が一週間も続いてるのだ。 昂平への想いと妄想と罪悪感で、頭がおかしくなりそうだ。  そう言えば、あの日からまたあんまり眠れてない。忙しくて睡眠時間が少ないんじゃない。 あきらかに悩みが原因の不眠症チックな症状だ。俺ってこんなに繊細だったのか。 「理音、どうした?気分悪いのか?」 相変わらず目敏いというか、どうしてお前はそんなに俺のことが分かるんだよ。 『……好きだ、理音……』  俺の妄想だって分かってるのに、あんなにはっきり囁くなんてズルイ。 一人でドキドキして、俺ってホント痛い奴。 「保健室行こう。クマできてるし、また仕事が忙しいんだろう?午後の授業は寝てろよ」  確かに仕事は、ありがたいことにこの一週間毎日ちょこちょこと入っていた。でも、20時過ぎには終わって帰れてるから特別身体がキツイってことはない。 とは言っても、ホントのことなんて絶対に言えない。 「……行く」 結局、俺は昂平に甘えて、立ち上がった。

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