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第43話

「小野先生ベッド一台貸してください……って、うさぎどんじゃないか」 「あれ、わんこ。と、理音くん?どったの?」  小野先生に事情を説明する役を全部昂平に押し付けてうつむいていたら、聞いたことのある声が聞こえた。 ゆっくりと顔を上げると、小野先生がいつも居る位置にいたのは宇佐木だった。 「なんでお前しかいないんだ、小野先生は?」 「タバコきゅーけい。俺はお留守番なの。ベッド借りるならノートに記入してねー」 「うまくいってんのか」 「いや?俺が一方的に押しかけてるだけ。なんか最近は便利な生徒扱いだわ」  やっぱり、仲がいいんだな。俺をそっちのけて楽しそうに話して……会話の意味わかんねぇし。ちくしょう。  一週間前に昂平が俺に言ったように、俺がこいつと仲良くなって、こいつの昂平への興味を削げばいいんだろうけど、それは無理だと思った。 目に見えない絆というか、信頼感というか。そういうものが、昂平と宇佐木の間には見えたから。 俺と仲良くなる目的で昂平に近づいてくる奴等とは根本的に何かが違う。 「理音くん、大丈夫?頭痛いなら薬もあるよ。あっ、ちなみに俺、保健委員だから安心して」 「大丈夫。眠いだけだから」 なんて。 てめーの顔見たら眠気なんて吹き飛んだっつうの。一応寝かせてはもらうけど。 「そ?無理しないでね。わんこが心配しすぎてカワイそーだからさ」 ああ?俺のこと邪魔なくせにそんな顔で笑いかけるなよ。 ファンとか絶対嘘なんだろうし。 つーかお前が昂平を語るな。二か月しか友達やってないくせに! 昂平は俺の、なのに。 なんてえらそーに思っても、昂平の顔もまともに見れない俺には説得力もクソもない。 「ほら理音、来い」 「かいがいしいね~わんこ。母犬っぽい」 「うるさい。理音が気にするからあんまりからかうな」 「ごめんごめん!なんか微笑ましかったから」 ……ほほえましい?  何故か、その言葉とそれを言った宇佐木がすごくすごくすごくムカついて。 俺は、近くにあった丸椅子を思い切り蹴り飛ばした。

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