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第44話
「うお!?びっくりした!」
「理音!何してるんだ!?あぶないだろ!!」
ムカつく……嫌いだ。
余裕な態度で俺に接する宇佐木も。宇佐木より、俺の態度を強く非難する昂平も。
こんなつまんないことでいちいち腹を立ててモノに当たる、幼稚な自分も。
「ムカついたから蹴ったんだよ!!悪いか!!」
「はぁ?ちょ、落ち着け理音」
「うるせぇ、俺に触るなッ!!」
俺の両肩に触れて宥めようとした昂平の顔を、思わず殴ってしまった。
いや、殴るつもりはなかった。手を振りほどくだけのつもりだったのに。勢い余って、顔に当たってしまった。
「……あ……」
「理音、」
怒られる?
昂平に、嫌われる?
軽蔑される?
また、あの冷たい目で俺を見るの?
いやだ、いやだ!
あの目で俺を見ないで、昂平……。
「わんこ、大丈夫か?けっこー気性荒いんだな、お前の可愛い子猫ちゃん」
「理音をからかうなって言っただろう」
「はいはい。んじゃあ、邪魔者はそろそろ退散します~」
でも、目を逸らされるのはもっと嫌だった。
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