46 / 141
第46話
*
たく、何やってんだよ、この二人は。苛々するなぁ。
あ、俺は犬でも猫でもなくて、兎こと宇佐木葵でっす。思いっきり外野なんだけど、少しだけ語らせてもらいます。
同じクラスの犬塚昂平は、幼馴染でモデルの猫田理音にガキの頃から恋してるらしい。ヤツが男を好きだと気付いたのは、なんとなくの勘だった。
2年にあがり、同じクラスになって、俺の前の席にヤツはいた。いぬづか、うさぎ、だからな。最初は、デカい奴が前だから黒板見えねぇなーとしか思わなかったけど。
『……おい、黒板見えるか?悪いな、座高が高くて。先生に言って変わってもらうから』
『や、別にこのままでいいし』
『そうか』
その仏頂面に似合わず、気遣いができる男だと思った。
でも俺のことは不良だと思ったようで(まぁ派手にしてるしな)、それ以来犬塚から話しかけられることはなかったけど。
俺は、自然と前に座るこのデカイ男のことを観察するようになっていた。
犬塚は変わったヤツだった。
バレー部のエースで勉強はできるし、でも寡黙な性格だから変に目立つこともない。
そんな犬塚を好きだという女子は、決して少なくなかった。
放課後に裏庭に呼び出されてたのを何度か目撃したことがある。
けど、ヤツは女子に何度告白されようが、部活で黄色い声をあげられようが、その仏頂面、ポーカーフェイスを崩すことは一度もなかった。
自分がモテるってことは意識すらしてないみたいだった。
――なんでだ?
仲良くなったあとに理由を聞いてみた。
なんと、『俺に告白してくる女は最終的にいつも理音を好きになるから最初からどうでもいい』らしかった。わぁお。
ともだちにシェアしよう!