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第53話

* あれからもう三日、経つ。 けど、理音とは顔を合わせてない。合わせてないというか――避けられている。 あんなに一生懸命続けていた朝練は休み、休み時間のたびにどこかへ消え、昼休みは俺が行く前に消え、放課後は俺が迎えに行く前に消える。避けられているとしか言いようがない。 「はぁ……」 今日の昼休みも逃げられた。無理に追いかけたり探したりはウザイからしないけど、理音の可愛い顔が見たい。 「何わんこ、まさかまだ避けられてんのか?」 「おう」 「てかお前、あの後ちゃんとフォローしたのか?」 「フォローって何だ。理音はお前を殴ろうとするし、俺はお前に殴られるし、もうわけがわからん」 「お前、本気で馬鹿なんだな。勉強はできるくせに」 本気で、と言われて少しムッとした。けど分からない俺はきっと馬鹿なんだろう。 あの日のことを思い返すけど、本当に分からないんだ。 理音が眠そうだったから保健室に連れて行った。そこにはおっさん先生はいなくて、宇佐木がいた。宇佐木は理音を心配してくれた。 なのに、いきなり理音は椅子を蹴り飛ばした。俺は理音の行動がわからなくてとりあえず諌めようとした。そしたら顔をはたかれた。 でも、多分あれはわざとじゃなくて、俺の手を振り払いたかっただけだろうと思う。理音が俺に手をあげるはずないから。 そして空気を読んで出て行こうとした宇佐木を理音が引き止めて、引き止めたっていうか…殴りかかったんだ。 でも結局殴らずに、泣きだした。 俺は理音にその行動の理由を聞いた。そしたら、今度は何故か宇佐木に打たれた。 好きな子を泣かすなって言われた。なんで俺が泣かしたことになってるんだ。 それと好きな子とか理音本人に言うな、バレるじゃないか。 「……あっ」 「理由がわかったのか?」 「俺が理音を好きだってのがバレたから、ドン引きされて避けられてるってことか?」 ずるっ、と宇佐木がこけた。

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