頭を抱える俺に、呆れ果てた顔をする宇佐木。なんでそんな顔をするんだ。分かってるのが当然みたいな。 俺はエスパーじゃないんだからわかるか！ 「……俺さぁ、前からわんこに聞きたいことがあったんだけど」 「なんだ？」 「このまま、この先もわんこがずっと理音くんのことを好きでいても、何もアクションを起こさなければ理音くんはいつかは離れていく…ってわかってる？」 「え？」 「普通に可愛い女の子と付き合ってさ、結婚してさ、家族ができてさ。お前、理音くんが自分から離れたら生きていけないみたいなこと言ってたけど、どうすんの？その時は」 「……………」 考えたこと、なかった。 理音が結婚する？ ーー俺以外の奴と？ 『りおちゃん、おとなになったらぼくとけっこんして、ずっといっしょにいようね』 『うん！』 「考えたこともないのか？それっておかしくね？理音くんはお前のものじゃないんだよ？」 「分かってる」 「分かってねぇよ。理音くんが女と遊ぶのは仕方なしに見てても、結婚は気が早すぎるとしても、特定の彼女ができるって想像したこともねぇのか？」 「……………」 ない、な。 「そんなのおかしいだろ。お前らはさー、おかしいんだよ」 おまえ…………『ら』？ 「お前も理音くんも一緒。なんで好きって言わないんだよ。お互いに特定の人ができるとか想像もしないくらい、死ぬまで一緒にいようと思ってるくせにさ」 理音も、俺と同じ気持ち？ 理音……そうなのか？ 「ホントに馬鹿わんこだな。今気付いたのかよ。俺は理音くんが泣いてるのを見て、お前のことが好きだって全身で叫んでるように見えたケド。……まあ、斜め上、だけどな」 なんで宇佐木は、俺のことだけじゃなくて理音のことも分かるんだろう。俺もこいつみたいな能力があればよかった。あ、童貞卒業すればその能力持てるかもしれないな。 でも、今はとりあえず。 「理音とこ行ってくる」 「おう、頑張ってお姫様を捕まえろよ」 「ん」 もうすぐ昼休みが終わる。そしたらとりあえず、３組に行こう。５限目が始まる前に捕まえるんだ。 ……けど、３組に行ったら。 「あれ？犬塚くんRIONに何か用事？RIONなら仕事が入ってるって昼休みから帰ったよぉ」 一足、遅かったようだ。