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第56話

* もう三日、昂平と顔を合わせてない。というか、一方的に避けている。俺が。 会いたくないんじゃない。会わせる顔がないんだ。三日前の俺の行動は最悪だった。 なんであんなに頭に血が昇ってしまったのか、自分でもよくわからない。寝不足でイライラしてたとしても、あんな癇癪は子どもと変わらない。子どもじゃないぶん、タチも悪い。 それでも昂平は、また俺を許すんだろう。ドロドロに甘やかして、原因もわかってないくせに『俺が悪かった』とか言って俺に謝るんだ。 でも、今回は甘やかされたくなかった。 これで甘やかされて何もなかったなのように許されようと思うほど、俺の神経は図太くない。 大体まず俺がしないといけないことは、昂平から逃げることじゃなくて、宇佐木に謝ることだ。 そして、「俺が昂平の好きな子」だってことは誤解だって言わないといけない。 でも、もしかしたら昂平が誤解を解いてるかもしれないな。だって宇佐木は昂平が好きで、昂平だって、まんざらじゃない感じだ。もしかしたら好き……なのかもしれない。 『りおちゃん』 俺のことをそう呼んでいてくれた頃の昂平は、間違いなく俺のことが好きだったと思う。 『りおちゃん、ぼくとけっこんしよう』 あの言葉を、忘れたことなんてない。 自分から逃げている癖に、つらい。 昂平に会いたい。 会いたいのに……。 「いいよーRION!すっごい切ない顔してた!」 カメラマンのその声で、俺はレンズから目を離し、ふぅっとため息をついた。 いつもはこの時間――通常なら昼休み――からの仕事は引き受けないんだけど、午後は好きな授業はなかったし、昂平から逃げるのも疲れてきたから、昨日の夜に来たこの仕事の依頼を俺は引き受けた。 朝練も行ってないから体力も余っている。寝不足なのは相変わらずだけど。

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