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第59話
めちゃくちゃ嬉しい、昂平が俺を捜してくれてるなんて。
さっきまで甘やかされたくないとか思ってたくせに、俺ってほんとダメなやつ。
『仕事中、』
でも、また俺は昂平に甘えるのか?
『仕事中、いつものスタジオ』
何もなかったみたいに、許されようとしている?
「……………」
送信する前に、削除した。昂平に会うのは、宇佐木に謝ってからにしよう……そうじゃないと俺、ホントにダメなやつになる。
今から急いで学校に戻って、宇佐木に会って謝って、そんで昂平に会って、逃げてごめんって謝ろう。
それくらい、俺にだってできる。
できる、はず。
「RION、メイクの時間だよー」
あ。
今から俺、マナミとキス、するんだった。
「あれ、起きてたんだ。どうかした?RION」
「いえ、なんでもないです」
「まさか今更キャンセルしないよね!?」
「まさか、ハハハ」
許されるならキャンセルしてしまいたいです。ほのぼのとした、いつもは癒される斎藤さんの笑顔が、何故か今は心にずんと乗っかって重く感じた。
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