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第62話
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俺の目の前には、でかいオフィスビルがそびえたっている。
若者が集まる繁華街から少し離れた場所で、どちらかというとサラリーマンが多い地域だ。
そして営業のリーマン達が吸いこまれたり吐きだされたりしている大きなビル群の中に、そのスタジオは存在していた。
「理音がよく撮影に呼ばれるスタジオって、確かここだよな……」
前に理音と街に遊びに来た時、一度だけ連れてきてもらった記憶を頼りに、俺はここまでたどり着いたのだ。ビルの名前は覚えてるので、そんなに難しいこともなかったが。
しかし、こんなオフィス街に高校の制服を着ている俺はまあ……目立つ。俺は無駄にデカイしな。
ビルの中では受付嬢が身構えてるし、うかつに入ったら撃ち殺されそうだ。ただの妄想だけど。
それでも俺は、やっと理音に自分の気持ちを伝える気になったからここまで来たんだ。宇佐木の言葉を全て鵜呑みにしたわけじゃない。理音が俺のことを好きだとか……。
まあ、それはそうだったらいいなって思うだけで、本気にはしていない。
俺は、理音が俺以外の奴のモノになるのが嫌なんだ。誰かのモノになるくらいなら、その前に俺のモノにする。
なんで俺は今まで、そうする考えに至らなかったんだろう。本当の気持ちを知られたら、理音が俺から離れていくって思うばっかりで……そりゃあ、その不安は正直今でもある。
けど、理音から自分から離れていくより、他の誰かのものになるほうが俺は嫌なんだ、って。そう思ったんだ。
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