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第63話
つーか理音が絶対ここにいるかもわからないんだが。なんとかして確かめる方法はないか。
俺をジロジロ睨んでる受付嬢に聞くのもな。今のところそれしか手はないんだけど、教えてもらえるわけがないよな。
俺ってRIONの友達なんですけどー、RION今日ここで撮影してますかー?
とか、チャラ男風でいくか?うん、無理だな。あーどうしよう。つーか、あんまりビルの前でウロウロしてたら警察呼ばれるかも。
俺は一旦この場から離れて、綺麗に舗装された道の真ん中にある木、その周りを囲むように設置してあるベンチにどっかりと腰を下ろした。
きっとリーマン達やOLの憩いの場だな、ここ。今は昼休みでもないから特に誰も休憩してないけど。
ケータイを確認してみるが、理音からの返事はない。けど、既読にはなっている。
……返信しろよな、ばか理音。
ふう、とため息をついてビルの入り口を見つめた。
ホントにこのスタジオにいるかは分からないけど、俺はここしか知らないし。昼すぎからいるなら、きっともうすぐ撮影は終わるだろう。
ここで待ってたら出てこないか……。
あ、でもいつも理音ってあの斎藤っていうマネージャーに車で送ってもらってんだっけ。じゃあ、出てくるのはこっちじゃなくて駐車場側か!
「まずったな……」
駐車場、どこだ。こんな歩道のド真ん中に車が出てくるわけないな。
つーかどんな車だったっけ。
色は確か白で、乗用車ってことしか覚えてない。斎藤マネージャーは確か40前半くらいで、白くて丸っこい、人懐っこそうな男だった。
あの人見知りの理音がかなり懐いているから、中身もいい人なんだろう。でも、少し面白くないと俺は思っていた。
まあ、あんなおっさんに妬いたりはしない。
理音の周りにいる奴らに妬き始めたらキリがないってこと、俺はもう知ってるから。
本当に、なんで俺は今まで理音に気持ちを伝えようとしてなかったんだろう。
いつだって、誰にだって理音は愛されて、大事にされていて。俺なんかすぐ手の届かないところにいってしまうって。
どうして、今までその可能性を考えなかったんだろう。
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