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第64話

それはきっと、理音がいつも俺のそばにいてくれたからだ。 疲れているだろうに、毎日一緒に朝練に行ってくれた。 クラスが違うのに一緒に弁当を食ってくれた。 少し生活の軸は変わってしまっても、理音は当たり前みたいに俺のそばにいてくれたんだ。 どうして、それが当たり前だなんて思っていたんだ――。 理音……今すぐ、お前に会いたい。 好きだって言って、そして…… 「RION!!待って!待つんだ!!」 ――ん? 今、リオンって聞こえたような?俺は声のした方角に目を向けた。 すると、さっきまで俺がうろついていたオフィスビルの中から、やたらとカッコイイ服と髪型をした、綺麗な男が泣きそうな顔をして飛び出してきたんだ。そのあとから、白くて丸いおっさんが。 それが誰かなんて、もう一度見なくたって俺には分かる。 「理音っ!!!」 俺は、そこらへんを歩いているリーマン達全員に聞こえるような、生まれてから一度も出したことのないような絶叫のような声で、愛しいそいつの名前を呼んでいた。 呼ぶと同時に、その方向へと走り出していた。 「……昂、平……?」 当然、理音にも俺の声は届いたと思う。 こけそうになりながらも、バレーをする時と同じ要領で立ち止まる。 俺のいる方向を見つめると、大きな目をますます大きくして、俺のいる方向へ身体の向きを変えて、こっちに向かって走ってきた。 今にも泣きだしそうな顔で。

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