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第65話

「理音!」 俺も理音の方へと駆け寄り、両手を伸ばした。そしたら、 「昂平……こうへいっ……!!」 理音はまっすぐに、俺の腕の中へと飛び込んできた。少し冗談みたいな気持ちで両手を広げたのに、そのまま素直に抱きついてくるなんて。 勢いで殴られるかな、なんてことも考えてたんだけど。まあ、冗談はさておき。 「理音どうしたんだその格好、衣装じゃないのか!?」 「昂平、昂平っ」 理音は俺の胸に顔を押し付けながら泣いていた。今日の撮影で何かトラブルでもあったのだろうか。 じゃなきゃ、こんないかにもさっきまで撮影してましたって恰好で出てきたりなんかしないよな。 こんな、我を忘れたみたいに俺に抱きついて泣いてるなんて、きっとよっぽどのことがあったに違いない。 「ちょっときみーッRIONのお友達くん!丁度よかったそのまま捕まえててっ!」 「は?」 理音、あのマネージャーから逃げてたのか?あいつが元凶?? 「昂平、逃げたい!」 「え?」 「俺、今捕まりたくない、ぜったい!!」 お前って、俺が自分をあいつに引き渡すなんてことは全然考えてないんだな。 まあ、当たり前か。 『りおちゃん、ぼくがずーっとまもってあげるからね』 俺はいつだってお前の味方で、ヒーローなんだから。 「……走れ、理音!!」 グイっと理音の手を引っぱると、俺は全速力で駆けだした。

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