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第67話
これは夢だろうか。
いや、夢なんかじゃない、現実だ。何でこうなっているのか、前後の繋がりは全然分からないけど、理音が俺にキスしている。
それは間違えようもない事実だ。
俺は戸惑って空(くう)を彷徨わせていた自分の両手を、しっかりと理音の細い身体に巻き付けた。そして、もう逃げられないように、ぎゅうっときつく抱きしめた。
自分から飛び込んできたんだから、放すわけがない。この先も、絶対に。
俺が抱きしめたせいか、理音の力がすっと抜けたのを感じた。唇も離れていきそうだったから、俺は今度は自分の方からぐっと唇を押しつけた。
「ンッ……」
理音の口から、色っぽい声が洩れた。それだけで、身体全体が熱くなってしまう。
俺は理音の全てを食べてしまうような勢いで唇に噛みつき、何度もキスを繰り返した。空気を求めて理音が口を開けた瞬間を見計らって、舌も入れた。
「んんっ……ふっ……」
トン、トンと理音が俺の胸をたたいている。きっと苦しいから離せって言っているんだろう。
ああでもどうしようか。苦しい思いをさせるのは嫌だけど、気持ちよすぎて止まらない。
理音の唇は柔らかくて甘かった。
口の中も、舌だって。
理音は女みたいに甘いモノが好きだから、全身どこを舐めても甘いのかもしれない。
「ふぁっ、こーへいっ……マジ……も、止めろ!」
キスの合い間をぬって吐きだされた言葉に、しぶしぶと唇を離した。
でも、身体は離してやらない。
「お前からキスしてきた癖に、止めろって何だ」
俺にしては不機嫌な顔で理音を睨むと、理音は少し気まずそうな顔をした。
「わかってるけどっ……俺は、ちょっとだけキスしたかっただけっていうか……」
「ちょっとだけ?」
なんだ、それは。
ますます眉毛を吊り上げる俺に、理音はあきらかにビビってしまっている。
「だって、昂平がこんな激しいキスしてくるなんて思わなかった!」
「当たり前だ。好きな奴からキスされてるのに我慢できるほど、俺は聖人君子じゃない」
「えっ?」
「理音が、好きだから」
色々すっとばした気がするけど、やっと言えた。あんな激しいキスをかましといて今更?って感じなのに、理音は信じられない、と言った風な顔で俺の顔をぽかんと見つめている。
「……理音が好きだから、たくさんキスしたかった。お前は、違うのか?」
理音の顔がどんどん赤く染まっていって、ごくんと唾を飲み込む音が俺にまで聞こえた。
ああ、可愛すぎる。しばらくマトモに見れなかった理音の顔が、すぐそこにある。
答えを聞く前にまた、キスしてしまいそうだ。
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