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第80話
俺の母は専業主婦だし、小学生の妹は俺が家に居る時は絶対にいるから(ちょっとブラコン気味の可愛い奴だ)、俺の家に呼んでセックスをすることはまずありえない。
そりゃあ千恵さんが日勤だったり、俺の仕事が入ったりして行けない時もあるけど。
三週間も、そんな機会が無いわけないのに。
もしかして昂平は、俺とセックスしたくないのかな。
付き合うだけで充分で、男同士で身体を重ねることには抵抗があるんだろうか?
俺は超可愛いけど、どう見ても男だし。やっぱり、女の子の方がいいのかな。
あ、ここ笑うところじゃねぇから。
大マジだから。
「リーオンッ、どうしたよ、浮かない顔して」
「千歳くん」
ポン、と肩を叩かれて振りかえると、そこには同期のモデル仲間の千歳くんがいた。
俺より一つ年上で、黒髪短髪、健康的な浅黒い肌の千歳シンジくん。色が白くて不健康に見える俺と真逆なところが受けていて、よく二人でファッション誌のページを飾っている。
優しいし、明るいし、俺にとっては頼りになる兄貴分って感じだ。
「そうだ、この間は本当にありがとう。俺が逃げたキス企画の穴埋めしてくれて」
「なに、気にすんなって!俺が風邪引いたときの借りを返しただけだし。ま、RIONとはあんまり貸し借りの関係にはなりたくないけどな、持ちつもたれつ、みたいなのがいい」
「うん、俺もできたらそっちがいい」
「ふふ、やっと笑った。撮影前に陰気な顔されてると俺も気になるからさ」
千歳くん、俺を元気付けてくれたのか。
あんたってマジでいい奴。
「なに、何の悩み?こないだのことか?あれって大体一番悪いのは最初にワガママ言い出したマナミなんだし、RIONが気にすることはないって!」
「もう気にしてないよ。悩んでるのは、別のこと……」
「なになに、恋の悩みとか!?RIONが!?」
なんでそんなにすぐ、言い当てるんだろう。千歳くんって、少し宇佐木みたいなところあるよなー。
「………うん」
千歳くんには意地も見栄も張る必要はないから、俺は素直にうなづいた。
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