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第82話

今日の撮影も順調だった。 最近は部活を真面目にやってるせいか、前よりも筋肉が付いてきてて、なんか男らしくなったねってメイクさんにもカメラさんにも言われて嬉しかった。 でも……昂平は、俺が細くて華奢なままなほうがいいのかな。別に今までだって、華奢すぎることはなかったけど。 あんまり筋肉とか付けると、イヤなのかな、やっぱり。触ったとき、固くて気持ちよくないだろうし。 「あ、まーた落ち込んでる!」 そう言われて、ほっぺたをつつかれた。 もちろん、千歳くんにだ。 「いやー結構重症みたいだよ、俺……」 「見てりゃわかるって、そりゃ。……それにしても、そこまでRIONに想われるその子がちょっとうらやましいなあ、俺」 「千歳くんが?……なんで?」 その言葉にキョトン、としてしまった。 だって男らしい千歳くんは、俺の倍以上はモテている。男にも女にも、だ。 そんな彼が俺を……じゃない、昂平を羨ましがるなんて。 いや、『俺に想われている』ことを羨ましがっている、のか……? 「なんでって!だって俺、ちょっとRIONのことが前から好きだったっていうか、彼女がいなかったら付き合いたいなって思ってたんだよ」 「えええ!?」 な、な、何を言いだすんだ千歳くん!!千歳くんともあろう人が、俺と付き合いたい!? 男でそんなことを思う奴が、昂平以外にいるなんて……いや、冗談だよな? 「だってさぁ、RIONって女の子より可愛いじゃん。可愛いっつったら怒るかもだけど、それに男だから色々めんどくさくねぇし、俺とも仲良しだし。もしも無人島に連れて行くの、可愛い女とRIONのどっちか一人だけ選べって言われたら俺、迷わずRIONを選ぶね」 「……それ、本気で言ってるの?」 「あはは!半分冗談、半分本気」 また、目をぱちぱちしてしまった。半分も本気だなんて、本当にびっくりだ。 「本当にその子が羨ましいな。最近RION、特に綺麗になったし、きっとその子のおかげなんだろうね」 きれいになった、なんて男に対する褒め言葉じゃないけど。 「……ありがとう、千歳くん」 今の俺には、すごく嬉しい言葉だった。

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