84 / 141
第84話
*
昼休みになってもまだ、俺は少し苛々していた。きっと午前中にずっとあの画像を見続けていたせいだろう。
ニヤけている千歳シンジはムカつくが、少しはにかんだ理音の表情が可愛くて……つい。
理音は俺といるときは自然体な表情だが、俺は雑誌の中で見せる色っぽい顔や、俺以外の奴と話すときのちょっと硬くなった顔も好きだ。
まあつまり、理音ならなんでも好きってことだ。
「こーへい」
「ん……理音?」
「何ぼーっとしてんだよ、もう昼休みだぞ」
珍しく、理音が俺のクラスに来ていた。昼休みなのは知ってる。知ってるけど……まだチャイムが鳴って3分くらいしか経ってなくないか?
理音はそんな俺の考えを見透かしたのか、少し唇を尖らせて言った。
「いっつも鐘が鳴り終わる前に俺のクラスに来るくせに。今日は来なかったから俺から来たんだよ」
「え、俺いつもそんなに早いか?」
「早いよ」
そうか、全然意識してなかった。理音に会いたすぎるからだな。
今日は、写メを見てたから急がなかったのか。
「あれ?昂平携帯替えた?」
俺の机に載っていたスマホを理音は目敏く見付けた。
「違う、これは宇佐木のだ」
「なんで宇佐木の携帯を昂平が持ってんの」
「……………」
自分のスマホで千歳シンジのブログを開きたくなかったから……という理由だけど、正直に言っていいものか。というか理音は奴のブログを読んだんだろうか?
ともだちにシェアしよう!