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第86話
そこは比較的デカイ部類の俺達が二人で入るとぎゅうぎゅうに狭くなり、俺はとりあえず理音を壁に押し付けた。
両手は、理音の顔の横に付けて。
でも理音は俺とは目を合わせず、俯いている。やばい。完全にびびらせてる。
「理音、俺は……」
「いやだ!昂平、怒んないで……俺、何も怒られるようなことしてない!」
「分かってる、理音。分かってるからそんなに怯えるな」
「……っ」
抱きしめたら、理音の強張っていた身体から少しずつ力が抜けて行って、俺がホッとした。
「責めるような口調になって悪かった。告白されたとしても、お前に非は一つもない。俺はただ、下心込みでお前の身体に触ってた千歳シンジにむかついていただけだ」
ああ、こんなにも嫉妬心を剥き出しにするなんて……情けないな、俺は。
「……本当に、怒ってない……?昂平」
「俺がお前に本気で怒ったことなんて一度もないだろ」
「……ない……」
理音は消え入りそうな声でそう言って、俺にギュウウっと抱きついてきた
あああ……
可愛いッ!!!
可愛すぎるぞ理音――ッッ!!!
思い切りそう叫びたかったが、学校のトイレなので一応自重した。
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