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第88話
*
放課後。
今日は撮影もないし、部活に行って汗を流して、昂平と一緒に帰れる!
そういや今夜は、千恵さんが夜勤かどうか聞いてないな。さっきトイレで深いキスしたし、もしかしたら今夜、昂平と……
ぎゃ―――っっ!!俺ってばすげー乙女思考!キモ!昂平はそんなこと考えてないかもしれないのに!
でも、あのまま宇佐木が来なかったら、ちょっとヤバい雰囲気になってたかも。
ああ、ドキドキが止まらない。
俺だけがこんなこと考えてたら、どうしよう。キスをねだったのだって、俺からだし。やっぱり引かれてしまうかな。
「理音、部活行くぞ」
「こ、昂平っ!今行く!」
いつの間にか生徒が少なくなっていた俺の教室に、昂平が迎えに来た。
慌てて立ち上がって、スポーツバッグを肩に抱えると……携帯が鳴った。
もしかして、これは……
「……はい?」
『RIONごめんよ――っっ!!連日で仕事あったの、伝えるのすっかり忘れてたぁぁ――!!』
やはり、マネージャーの斎藤さん。そんなこったろうと思ったよ。
「もう、今からですか?」
『うん!今から!!5分後には校門前に着くから!!』
「はーい」
通話を切り、深いため息をはぁ――っと吐いた。ああ、これで今日も帰りが遅くなるから、昂平との初エッチはなし……っと。
まだするって決まったわけじゃないけど。
「仕事か?」
「うん。伝え忘れてたって。まったくもう、うちのマネージャーやばいでしょ」
「まさか、また千歳シンジとか?」
「同じ雑誌の撮影だから、多分そうだろーな。今日もあるなんて、昨日誰か言ってくれたらよかったのにー」
軽く千歳くんの名前を出したら、昂平の表情が変わった。
あれ?変な誤解はさっき解けたはずって思ったんだけど……。
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