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第91話
昂平を連れて斎藤さんの待つ校門へ行くと、斎藤さんは昂平を見るなり「あーっ」と驚いた声をあげた。
「君、こないだ僕が逃げたRIONをおっかけてて、捕まえて!って言ったのに連れ去った子じゃん!あのあと大変だったんだからねー」
やばっ、昂平はデカイから、それだけで印象に残りやすいんだった。
俺は昂平の前に出ると、斎藤さんに弁解する。お世話になっている人に、幼馴染……いや、恋人に悪い印象を持たれたくないからな。
「斎藤さん、あれは全部俺が悪いんです!こいつに俺と逃げてって頼んだのは俺で……」
そう言いかけた俺の、更に前に昂平が出て、ぴしっとお辞儀をした。
いきなりデカイ奴に頭を下げられたからか、斎藤さんも「うっ」と怯んだ。
「その節は理音がご迷惑をおかけしました。ついでに俺も」
「ま、まぁもう終わったことだけどさ、でも、逃げてるRIONが逃げたいっていうのは当然だけど、普通大人の言うコトはきくもんでしょ!?しかも君はRIONが仕事中だって分かってたんだし!」
「はい。でも、俺は理音が一番大事なので、理音以上に優先させるものはないんです。理音の頼みごとだったら、それがあとで仕事に影響するとしても、俺は理音を優先します」
「ちょ、昂平!!」
この馬鹿!何も斎藤さんにまでカミングアウトすることないじゃんかよーっ!!この人は普通に結婚してて子供までいるんだぞ!
付き合ってるってばれたら何て思われるか……!!
「え。きみ、もしかしてRIONの彼氏なの?」
「はい」
「あ、そう。なるほどね……それで……へぇ」
斎藤さんは驚いたのか、さっきまでの怒りはふっとんでしまったようだ。でも、驚いてるにしては反応が普通というか、むしろ、落ち着いてる?
てゆーか「彼氏なの?」「はい」って!!
正直すぎだろばかぁ――っ!!
「あ!やばいあと30分しかないっ!RION車乗って!!」
「あ!あのっ、昂平も見学で連れってもいいですか!?」
「え、見学ぅ!?しょうがないなっ、じゃあ君も早く乗って!」
「はい」
きっと断る時間も惜しかったんだろう。でも俺の恋人だし、部外者立ち入り禁止でもないし、いいよな?
もし何か言われたら控室で待っててもらおう。昂平は課題でもやって待ってるだろう。
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