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第93話
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とりあえずマネージャーの斎藤氏には早々にカミングアウトした。
この人はきっと理音が男を好きでも軽蔑するような人じゃない、と勝手に判断したからだ。宇佐木が芸能界はホモが多いって言ってたし、きっと珍しくないだろうな、ということも見越してだ。俺の考えは間違っていなかった。
それにしても、千歳シンジがそんなに周りに気付かれるほど、理音にちょっかいをかけていた(?)とはな。
無理を言ってでも、付いてきてよかった。今日は牽制しまくってやる!!
「こんにちは!少し遅れてごめんなさい。今日もよろしくお願いします!」
スタジオの中、テレビで見るような撮影場所に入るなり、理音がスタッフ全員に聞こえるような大きな声でそう言った。
まるで部活のときと同じようなノリだ。
たぶん、雑誌の中の理音しか知らない連中は、理音がこんな大きな声を出せることを知らないだろう。むしろボソボソっとしゃべるイメージしかないんじゃないだろうか。
すると、ヘアメイクさんっぽい女性(腰の道具で判断した)がこちらに気付いて近寄ってきた。
「RION!授業が長引いたのかと思ったー!どうせまた斎藤っちが伝え忘れてたんでしょー!まだ娘が小さくて可愛いからって仕事おろそかにしたら困るよージャーマネ!」
「その通りで面目ない~、あ、昂平くん娘の写真見る?まだ2歳でねぇ、可愛いんだなぁコレが」
「後で見せてもらいますね」
今見ても良かったが、そう言ったのはその女性が俺を見てそわそわしてたからだ。
きっと部外者の俺が何者なのか、知りたくてしょうがないんだろう。
「あ、今日は見学者連れてきました」
「犬塚昂平です。いつも理音がお世話になってます」
理音がその視線に気づいてくれたので、俺は自己紹介してぺこっと頭を下げた。
女性はにこにこした目つきで、俺の頭の上から足の先までをジロジロ見ている。なんだろう。
「君、すっごく身長高いね。何センチ?それに細いし、でも筋肉しっかり付いてるし、よく見たらいい男!お肌もきれいだねーっ」
「あ、あの?」
「あっ、ごめんね!ジロジロ見ちゃったりして。私はヘアメイク担当の和泉です!RIONが友達を連れてくるなんて初めてだからびっくりしちゃった。えっと、見学ってことはもしかしてモデル希望なの?」
「いや、違います」
「そうなの?じゃあどうして?」
聞かれた途端、遠くの方から「いずみーん!!」と和泉さんは呼ばれていた。
「あぁゴメン、じゃあRION、10分後にメイク入るから、先に着替えてきてくれる?」
「はい。行こう、昂平」
心なしか、俺と和泉さんのやりとりを見ていた理音の表情が少し暗い気がした。
気のせいか?
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