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第96話
そして二人は撮影用の衣装を着た。色は違うが双子のように対になったオシャレなデザインで、それを着こなす二人の姿は単純に美しい、と思った。一般人だと見れたもんじゃないだろうな。
不思議と、理音が他の男とお揃いの服を着てても悔しい、なんて感情は一切湧いてこない。
もし俺がその服を着ろと言われても、俺には絶対に似合わないし、俄然お断りだ。
やっぱりモデルというのは凄いな、と改めて感心した。
二人はこんなの当たり前みたいな顔で、また雑談を始めた。
「てかRIONって猫田っていうのか?可愛い名字だなー、下の名前は?」
「そりゃ、リオンだよ。理科の理、に音で理音。もしかして千歳くん、俺の名前ずっと芸名だと思ってたの?」
「お、おう。そっか、お前、理音って言うんだ」
「えー!千歳くん今更すぎでしょ!!」
千歳のやつ、本名も知らないで理音に告白したのか。なんていうか、結構適当なヤツだな。
そして俺は、一つ突っ込みを入れた。
「ていうか理音、お前千歳さんの前だとなんでそんなにブリッコなんだ?」
「はぁぁ!?別にブリッコとかしてねぇーし!ふざけんな昂平!」
一応学年が一つ上の先輩らしいから、さん付けで呼んだ。さっきからずっと気になっていたんだよな。理音がかわいこぶってるというか……可愛いからいいんだけど。
そうそう、そういうのがいつもの理音だ。案の定、千歳はあんぐりと口を開けてぽかんと理音を見つめている。
無意識だったんだろうが、理音、今までどれだけぶりっこかましてたんだよ。
「RION!千歳くん!何してるの、和泉さん待ってるよー!!」
「あ、すいません!」
「今行きます!!」
斎藤氏が呼びに来て、理音と千歳は慌てて服を再度整え始めた。そして、先に千歳が控室を出て、次に理音と俺が出た。
「走るぞ、昂平!」
「わかった」
場所はわかってるんだが、理音は俺の手首を掴んで走り出した。少し耳が赤くなっていることに気がついて、俺は理音に聞こえないようにクスッと笑った。
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