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第99話

俺がさっきの控室で課題を始めて、30分ほど経った頃、ドアがノックされた。 理音か千歳だったらノックせずに入るだろうから、その二人じゃないことは確かだ。それか、中に二人がいると思っているんだろうか。 「はい?」 とりあえず、少し警戒しながらドアを開けた。そこにいたのは、さっきも会ったヘアメイクの和泉さんだった。 「和泉さん?どうしたんですか」 「へへへ~、昂平くんに用があって来たの。ねぇねぇ、ちょっとモデルやる気ない?」 「ないです」 間髪いれずに断った。和泉さんの肩がガクッと落ちる。 「そ、そんなに早く断らなくても~!ちょっとだけ、今日だけだから!お遊び的な感じで!」 「こんな平日ド真ん中に遊んでる暇なんかないでしょう、俺も貴方も」 「そりゃーそうだけど、……ていうか昂平くんもRIONとシンジを見てすごいって思ったでしょ?君もモデルみたいに着飾って撮られてみたくない!?容姿は申し分ないし、世界が変わるかもよ~」 「変わらなくていいです。変わったら恐いし」 「ちょっと、高校生の発言とは思えないんだけど。…昂平くんってどのモデルとも雰囲気が違うから、インテリ系っていうか……きっとすごく変わると思うんだよね。RIONと2ショットとか撮って残しておきたくない!?きっと素敵だと思うんだー!お母さんとかにも写真見せたら喜ぶよ!ていうか顔と髪の毛で遊ばせろ!」 お、おおう。本音が飛び出てきた。こわいよー(棒読み)だが、断る!! 「さっきの理音と千歳さんがスゴイと思ったからこそ、俺にはできません。でも、あの……百歩譲って髪とかで遊ぶのはいいですけど、撮影は勘弁してください」 「よっしゃーっっオッケーでた!じゃあこっちの部屋までついて来て!あ、RIONにはまだ内緒ね、驚かせてあげたいから!」 な、なんて強引なんだ……。あれか?着せ替え人形遊びみたいなことがしたいのか? いきなり素人の俺を捕まえてこんなことを頼むとは、業界人はよく分からん! 「あ、そうそう。RIONあれからすごくリラックスしたみたいでね、いつものRIONに戻ったよ!ありがとうね、昂平くん。でもさっきのRION可愛かったなぁ。普段もあんなキャラなら面白いのに」 「俺の前ではいつもあんなキャラですよ」 少し優越感に浸りながらそう言う俺に、なぜか和泉さんはニヤニヤとしている。そして俺は、別室へと連れて行かれたのだった。

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