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第100話

* ああもう、まだちょっと顔が熱い。昂平のばかばかばか!いきなり何を言い出すかと思えばバレーの試合を想像しろとか、できるかっ!やってみたらできたけど! それよりも、今まで俺が築いてきた(?)クールでミステリアスなRIONのイメージがガタ落ちだ。気心知れたスタッフさん達相手だし、斎藤さんが何も言わなかったから(むしろ大爆笑してた)いいのかな。 しかし、俺がバレーやってたらそんなに面白いかよ!次の試合、スタッフ全員で応援来るとか言ってたし。くそっ!俺のバレー選手ぶり、いや、ブロッカーぶりを目にもの見せてやるぜ! でも、まだレギュラー決定したわけじゃないし、さっき昂平が言ったことを現実にするためにも、明日からまた部活がんばんなきゃな! 「あー、さっきのRIONマジで面白かった。サーブが苦手なのか?俺バレーとか全然わかんねーけどさ。ポジションとかあるんだろ?セッターとか」 千歳くんがまだ少し笑いながら聞いてきた。一応、撮影は一段落ついたところだ。 俺の緊張がほぐれたのは、昂平に感謝せざるを得ないかもだけど。でも、そもそも昂平が付いてこなきゃ緊張なんかしなかったんだよ。 「俺はミドルブロッカーっていうポジションだよ。囮やったり、まぁ主にブロックが仕事」 「ええ!それって顔とかに当たるんじゃねぇの、モデルなのにやばくね!?ていうか恐くね!?」 「んー、でも俺、練習試合にしか出たことないからなー……顔面に受けたことはないよ。当然手やら腕やらは痛いけどね。でも、ブロックしたボールが相手のコートに落ちて点稼げたときは快感なんだよねーこれが!」 「へぇえ……んじゃ、彼氏は?」 「昂平はエースアタッカーだよ。もうマジでスゴイの、ズドンって音するからね、アタックが決まったら!あとサーブも上手で、昂平にサーブやらしたら絶対何点かもぎとるんだ!バレーしてる時だけはあいつのこと、真剣にカッコイイって思う!」 「へぇー……」 はっ。いつの間にか、部活について語りまくってしまった。 「ご、ごめん!!なんか、つまんない話して」 「いやいや、俺から聞いたんだし。すっげぇ面白いよ?RION、本当に普段の顔とモデルの顔って全然違うんだなぁ。俺、RIONのこと好きだって言ったけど、一体RIONの何を見てたんだろうな?って今日だけですっごい思わされた」 千歳くんの言葉にキョトンとしてしまう。だってなんか俺、二重人格の人みたい。 「俺は俺だよ。まぁ、モデルの時は普段よりも少し大人しいかもしれないけど、別に意識して変えてるわけじゃないし」 「そりゃRIONはそうなんだろうけど、やっぱり全然違うよ。今日、RIONの素な部分が出るのはやっぱりアイツがいるからなんだろうな。…RIONが彼氏のこと大好きなんだってのがすごく分かる」 「そっ、そんなの……!」 「照れなくていいって。さっきトイレでの会話聞いてたけど、アイツのこと好きすぎだから!それに昨日の相談だけどさ……あの方法でイケると思うよ?あいつRIONのことが大事すぎて手を出せないだけだと思うし。RIONから誘ったら、絶対落ちる。マジで、試してみて?」 「ホントにぃ?……じゃあ……やってみようかなぁ……」 「うん。ガンバレ!」 「ありがとう、千歳くん」 ニッコリ笑ってお礼を言った。千歳くんの顔がかーっと赤くなる。 今のは、さすがに俺でも千歳くんの気持ちに気付けた気がする……。 すると、いきなりスタッフさんたちがざわざわっと騒ぎだした。 「!?」 「あれ?今日モデルもう一人呼んでたのかな」 スタジオに見慣れない感じのモデルが入ってきていて、彼の登場にスタッフがざわめいたみたいだ。

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