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第103話
ただの記念撮影だったのに、大人たちの悪ふざけで『あーでもない』『こーでもない』とポーズを取らされ続けて、気がついたらもう20時半になっていた。
「ふー、慣れたらなかなか面白かった。というか、新鮮だった。たまにはこういう経験もしてみるもんだな。まぁ二度とやらないが」
「昂平お前、後半から調子に乗りすぎ!大体よっく見たらお前じゃなくて、服がかっこよかっただけだし!」
そう、見慣れたらいつもの昂平だった。
でも、見慣れないから早く脱いでほしい。
口ではこんなことを言ってしまうけど、俺はさっきからドキドキしっぱなしなんだ。
「でも、服を良く見せるのがモデルの仕事なんだろ?それなら俺は大成功じゃないか」
「……っ、でもお前のはただの着せ替え人形だ!」
「当たり前だ、俺は素人だぞ」
くそぉ、何を言っても言い返される……くやしー!!
「ところで理音、」
いきなり昂平が真顔になって(いつも真顔だけど、特に)俺に向き合った。
「何だよ?」
「今日うちの母さん、夜勤でいないんだ」
「え……」
「それで……だな、疲れてるかもしれないが、よかったら今日、ウチに――」
「あーいたいた、えーっと昂平くん?ちょっと話があるんだけどー」
昂平の言葉をドキドキしながら聞いていたら、向こうから編集長がやってきて会話を遮られた。編集長、さっきまでいなかったのになんだろう?まさか、昂平にスカウトじゃ……!?
いや、さすがにそれはないか。
てか、今俺、昂平に家に来いって誘われた!?それって、それって今夜、その―ー
「……おい。おい、理音。お前からも断ってくれ」
「え?なに?」
「いやいやRIONからも頼んでくれよ!一枚だけでいいからさ、昂平くんとRIONの2ショットを雑誌に載せたいんだよ!頼むよ~!すっごくいい写真だし、マネージャーさんからはオッケーもらったからさ。あとは昂平くんの了承だけなんだ」
えっ、えっ?何の話?
……さっき撮ったおふざけ記念写真を雑誌に載せるって?はぁ!?
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