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第104話

俺も慌てて反対した。昂平が雑誌に載るということよりも、俺自身のイメージのために、だ。 「いやいやいや!編集長、それこそ俺のイメージ壊れるでしょ!!だめ、絶対ダメですよ!」 「だから斎藤さんにはオッケーもらってるんだってば。RIONの新たな一面を見せて、新たなファンを獲得しよう!ってことでね。やっぱり常にクールな表情のRIONより、笑顔のシンジの方が人気だからねぇ。まあキャラが被るとかじゃなくて、目指すはRIONのギャップ萌えだから!」 そう、いい顔で言い放つ編集長。ぎゃ、ギャップ萌え?なんだそれ。 だってさっきの記念撮影は、エロい表情をしたのもあるけど、思いっきり笑ったり、昂平とじゃれたり千歳くんと三人で絡んだりした、ホントにふざけたやつなのに。 「載せたいのが理音の顔だけなんでしたら、俺の顔にはモザイクをかけてもらえますか」 「そんなことしないよ!?一応有名ファッション雑誌なんだからね!?まぁ、君は素人だからギャラは出ないけど、斎藤くんに焼き肉でもたらふく奢ってもらえばいいさ!」 「(ごきゅっ)」 「喉を鳴らすな馬鹿」 すると、そんな俺たちを見て笑いながら、斎藤さんが近づいてきた。 「いいよー焼き肉くらい、経費で落ちるから~。それよりずっと気になってたんだけど、昂平くん、今日部活は?RIONは仕事だから仕方ないとして、君エースなんでしょ?休んで大丈夫だったの?」 「……」 痛いところを突かれたな……。昂平の顔には、『ダイジョウブジャナイデス』と大きく書かれていた。そして、いきなり。 「あの!俺が理音と写ってる写真、いくらでも載せてください!!それでアリバイというか俺も一応ボランティアだけど仕事してたんだぞ的な展開にもってくんで!!」 「はあぁ!?何言ってんだ昂平!!」 「うるさい!そうでもしないと明日佐倉先輩にどれだけ責め苦を味わわされるか!お前は俺が佐倉先輩に殺されてもいいのか!?」 「自業自得だろうが!!」 ぎゃんぎゃん言い合いをすることおよそ3分。まぁ、俺の反対意見なんて最初から通ってもいないけど。 結局昂平が頼み込む形で、編集長も斎藤さんも大変喜ぶ結果となった。 「まぁ、誰なのかって聞かれたらRIONのお友達ってことにしとくけど君はモデルじゃないから、個人情報の流出とかその辺は心配しないでね」 「お願いします。一応俺、将来刑事志望なんで。まぁ別にバレても大丈夫だと思いますけど」 ホントに大丈夫なのかよ……。 ま、知ってる人にも昂平だって言わないと分からないレベルで変身してるから大丈夫かな。するとニヤニヤしながら、斎藤さんが昂平に茶々を入れた。 「へぇ~、刑事かぁ、カッコイイね。RIONに近づく奴は全員逮捕する!って感じ?」 「そうですね。ストーカ―とか出たらワザと罠にはめて絶殺しますね」 「ぜっさ……?」 「ぜったいこ……むぐっ」 「ほら!そろそろ帰るぞ昂平!明日朝練行かないとまた怒られるから!」 物騒な発言をしそうだった昂平の口を慌てて押さえこんだ。刑事志望のくせに殺すとか言うなっつの!つーか色々恥ずかしいし……。 俺は昂平の腕をがっちりつかむとズルズルと引っ張り、スタジオを後にして控室へと戻った。

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