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第107話
斎藤氏は俺の分まで弁当をくれると(ホントはスタジオで食べてもよかったけど遅くなるから)俺と理音を残して夜の住宅街へと消えて行った。
「……」
「……」
しばし、沈黙した。
けど、その沈黙を破ったのもやっぱり俺で。
「……おい、理音」
「なんだよ」
「お前、今日俺の家に泊まる……のか?」
確認だ、一応。他に理由はないと思うけど確認!!だって違ってたらかなりショックだぞ。
つーかかなりカッコ悪い。
「泊まるほかに、ここで降りる理由があったら俺が知りたいんだけど?」
「! そ、そうだな……じゃ、とりあえず中で弁当食うか」
「おう。……先に家に電話する」
内心めちゃくちゃ緊張している俺に対して、理音の表情は変わらない。期待しているわけでも、恐がっているわけでもなさそうだ。
俺たちは、恋人同士だよな?
でも俺はずっと理音に手を出すのを我慢していて、でも、そろそろ限界で、理音を抱きたくて仕方がなくて。そろそろいいかな、なんて思って下心満載でこうして泊るのかどうか、確認したわけで。
「……」
でも理音はそんな、俺に抱かれるつもりなんて、ない?
もしかして俺は、今夜も試されるのか?
いやいや!
また一緒にベッドで寝るとしても、もう自分を抑えられる自信はないぞ……!!
「昂平?あがんねぇの?お前んちだけど」
「……理音」
俺は、家主よりも先に家に上がっている理音の腕を玄関先から引っ張った。
「うわ、何すッ……!」
バランスを崩した理音が、俺の胸の中に落ちてきた。俺はその愛しい身体を、ギュッと抱きしめた。今日、何度もしたみたいに。
「理音。俺はもう、我慢なんか、できない。今日お前がうちに泊るなら、俺は……俺は、お前を抱くぞ」
そう、きっぱりと言った。
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