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第108話
玄関に静寂が広がる。いや、静寂ではないな。ウルサイ、主に俺の心臓の音が。
ドキン、ドキン、ドキン、ドキン、ドキン、ドキン、ドキン、ドキン
あれ?うるさいのは、俺の心臓の音……だけじゃ、ない?
「……逆にさぁ、ここまで来て抱かねぇって言われたら、俺のほうがびっくりだわ」
俺の背中にそうっと腕を回して抱きついてきた理音が、震える声でそう言った。
「……ッ!」
俺は少し身体を放して、俯いている理音の顔を見下ろす。理音の白い肌が、見える範囲すべて真っ赤になっていた。
小さめの耳、首筋、鎖骨……そして、かすかにふるえている、細い肩。誰が、期待も恐怖も感じてないって?嘘だ。俺がテンパリすぎて、理音の変化に気付かなかっただけじゃないか。
「理音……!」
今日、何度めかのキスをした。
「ふっ、ンん、んちゅッ、チュッ」
理音の小さな頭を抑えつけて、噛みつくような激しいキス。理音が小さく口を開けたので、早急に舌を入れて絡める。しつこいくらいに追いかけまわす。
最初は逃げていた理音の小さな舌も、今は俺を追いかけてきて同じように絡めてくれる。その変化が嬉しくてたまらない。
口を少し離すと、飲みきれない唾液が理音の顎を伝った。
「こー、へぃ……」
うっとりとした目で俺を見つめて、とろけるような声で俺の名前を呼ぶ。視覚的にもエロすぎて、俺は簡単に勃起してしまった。
今度は、誰にも邪魔されることはない。
「理音、好きだ、好きだ!好き、好き」
「ンッ……俺も好き、昂平、大好き」
理音を抱きしめたまま靴を脱いで、玄関に上がる。二階にある俺の部屋へと連れ込もうとしたら、いきなり理音からストップがかかった。
「昂平、待って!その、シャワー浴びたい!」
「は?いらないだろそんなの」
「ちょ、だって俺、汗……汚いし!」
「理音に汚いところなんて無い」
「いや、あるからリアルに!お願いだから5分だけ待っててくれ!!」
リアルに……とまで言われてしまったら渋々従うしかない。ちくしょう、理音とのセックスをまさか理音に邪魔されるとは。
なんか色々と頭がおかしくなってる気がするが、今の俺には整理できない。
今日は部活はしてないとはいえ、汗はかいているから浴びた方がいい……か。理音は汚くなくても、俺がクサイと言われたらそれはそれでショックだし。
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