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第123話
まぁ、仕方ない。部活中に俺の言葉を思い出してニヤニヤする昂平を想像したらキモイという言葉しか出てこないけど、それでも惚れた弱みというか……しょうがないな。
俺も、12年振りに『結婚しよう』と言われて嬉しかったから、いいか。
「……おう」
言ったぞ。
「……は?何だ、おうって」
「あ?だから返事だよ。結婚してくれ、おう、って」
「そんな簡単なのか!?もっとこう、なんかあるだろ!?そんなんで俺の妄想が満たされると思ったら大間違いだぞ!理音!!」
「なんかって何だよ!つーか妄想すんな変態が!!……あぁもう、えっとぉ……ふつつかものですが、これからもよろしくお願いします…これでいいかよ?」
プロポーズの理想の返事なんてしらねぇよ、馬鹿が。それとも某芸能人みたいに『おっけー☆』ってほっぺでたこ焼きを作りながら軽く言えばよかったのかよ?いや、それだと「おう」とそんなに変わらないか。
「……っっ!!一生、俺を支えてくれ、理音――っっ!!」
「うわっ!?ンンッ……!」
どうやら、これでよかったらしい。再びベッドに押し倒されて、濃厚なキスをされた。
*
朝練に遅れると言って無理矢理昂平をひっぺがした。唇思い切り吸いやがって、痛いっつーの。ああもう、なんでこんなヤツが毎回テストで上位の成績を取れるんだろう。地頭がいいんだろうけどさ、昂平は、でもなんかズルイ。
すっかり目が覚めてしまった俺は、痛む腰をさすりながら昂平のあとにシャワーを借りて、昂平が家を出たあとに一度家に帰った。教科書を準備して、起きてきた母ちゃんと父ちゃんと花音に『おはよ』と挨拶して、朝飯を食べる。朝練に行ってなかったらいつもと変わらない日常のはずなのに、なんでだろう、何かが違う。
「お兄ちゃん、なんか顔赤いよー?どうしたのー?」
「あら、理音熱があるの?」
「や、別に大丈夫だし」
やっぱりこれは、甘い腰の痛みが関係してるんだろうか。それとも、12年ぶりに言われたプロポーズのせいだろうか。
「あんまり無理したらダメよー、昨日仕事のあとに昂平くんの家に泊まったりして、迷惑かけなかったでしょうね?」
「別にかけてねーし、あ、弁当食ってくの忘れた」
昂平はちゃんと食べて、朝練に行ったかな。
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