＊ 　昨日部活を無断で休んだため、一体今日は朝からどんな過酷メニューをやらされるんだろうかとびくびくしながら朝練に行ったが、驚くことに佐倉先輩はあんまり怒ってなかった。 　というか…… 「昂平ーっ！！お前いつの間に千歳シンジと仲良くなったんだよ！！ズルイ！！ズルすぎる！！俺シンジの大ファンなんだよ、サイン貰ってきてくれ！！」 　スマホを見せられながら、そんなことを言われた。　チェックしてなかったが、千歳は本当に俺との２ショットをブログに載せたらしい。 　名前とかはどうしたんだろうか……えーと、RIONの親友で俺ともダチになった『WANKO』……て、おい。そこは『KOUHEI』でいいだろ！絶対ウンコとか言ってくるヤツいるだろ！！ 　ああ、なるほど。理音を奪った腹いせが少し混じってるな？ 「そんなの初耳なんですけど。むしろ今まで理音に頼めばよかったんじゃ……」 　ていうか、その写真だけでよく俺って分かったな。そんな簡単に分かるもんなのか？結構化けたと思ったんだけどな。 　 「ばっかお前、一応RIONもモデルなのに同業者にサインもらってきてくれとか頼みにくいじゃねぇか！！な、いいだろ！それで昨日部活サボったことも不問にしてやっからよ！！」 「先輩……それって立派な脅しというか、恐喝です」 　ていうか職権乱用？ 　佐倉先輩は、キャプテンでもコーチでもないんだけど。でも矢野キャプテンがあんまり怒らないから、一応副キャプテンの佐倉先輩が怒るのがうちの部の当たり前になってるからな……。 「黙れ！RIONのクラスの女子が『お姫様のピンチなんで王子様は向かわなきゃいけないんです～』とかわけわかんねーこと言ってたから今日はボコボコにしてやろうと思ってたのに、お前いつの間にモデルとか始めたんだよ！昨日シンジのブログ見てマジでびびったんだからな！！」 「はぁ」 　すごい、女モデルの話よりも食い付き方が違う。マジで千歳のファンだったのか……まぁ、男受けしそうな容姿だもんな、あいつ。かっこいいし。 　すると、１年の進藤までも話に加わってきた。 「ホントに僕もびっくりしましたよ、まさか犬塚先輩が千歳シンジと２ショットしてるなんて！おとといは猫田先輩と千歳シンジのラブラブ２ショットにびっくりしましたけどね」 「は？」 「まあ、それで犬塚先輩がキレて千歳シンジに会いに行くんじゃないかなーってとこまではうっすら予想してましたけど、まさかこんなに仲良くなってるとは思いませんでしたよ。何があったんですか？」 おいおい……。 「ちょっと待て、なんでそこまで予想してる？俺は理音とのことはバレー部員には誰にも言ってない、ハズだが？」 　理音が言ってなければな。でも理音が言うハズがない。恥ずかしがり屋だからな！ 「もうそれ肯定じゃないですか、すっごい今更ですけど。二人が付き合ってるとか付き合ってないとかはすっ飛ばして好き合ってることは、この学こ……バレー部で知らない人間がいるわけないでしょ？毎日あんなにラブラブなんですから。好き合うっていうよりもはや愛し合ってますよね」 「……」 　本当に、俺達のお互いに片想いしていた期間ってなんだったんだろう。理音が朝練に来てなくて本当に良かった。