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第126話

「昨日の千歳くんのブログ見たか?お前、わんこって名前付けられてたな」 向かい合って弁当を食いながら、理音もその話を始めた。なんでみんなして千歳のブログをチェックしてるんだ。ブログチェックって高校生の嗜みか何かなのか??知らなかった。 「まったく、モデルらしくない名前を付けやがって」 「別にいいじゃん、お前モデルじゃねぇんだし。これっきりなんだからさ」 「そうだけど、もっとかっこいい名前が良かったぞ、俺は。お前みたいな」 そう言ったら、理音が一瞬目を大きく開いて、その後くつくつ笑った。 「かっこいい名前って、俺は本名だっつーの!」 「まあそうだけど、たとえばほら…昂平って名前の一文字を取って『SUBARU』とか。うわ、かっこいいなスバル。俺、これからSUBARUになる!!スバルって呼んでくれ、理音!」 「もーお前はWANKOだよ。考えるのが遅いっつーの。てかスバルって漢字違くね?」 「ちっ……」 なおも笑い続ける理音。そこで俺は、あることに気付いた。 なんか少しだけ、理音の雰囲気がいつもより柔らかい気がする……ってことに。 「理音、なんか今日のお前、いつもと違うな」 「え?そうか?別に熱なんかねぇぞ」 「なんか……いつも可愛いんだけど、今日はいつもよりもっと可愛いっていうか」 理音の顔がかぁっと赤くなった。照れ隠しなのか、ぐさっと乱暴に唐揚げにフォークを突き刺した。 「は、はぁー?なんだそりゃあ!つーかかっこいいって言えよ、せめて」 「いや、可愛いって言う。なぜなら可愛いからだ」 「ああもう、うるせぇな、あんまり教室でそういうこと言うなってば!また周りからニヤニヤされるだろ!」 「教室じゃなけりゃいいか?」 理音はちらり、と上目遣いで俺を見つめた後、からあげに目線を戻して。 「……二人のときなら、な」 と言った。 やっぱり、可愛い。いつもの100倍くらい可愛い。部活の時に体育館で思いきり言おうと思ってたけど、何気に阻止された。

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