129 / 141

第129話

「俺も、自分でなんかおかしいなって朝から思ってるから。昨日、お前に抱かれて……なんていうか、お前のことが、すごく愛しくて……」 「え……」 「今更だよな。ずっと好きだったのに。なんか、想いが通じて、身体も繋げて、またお前からプロポーズの言葉聞けて……でも、お前も昔のプロポーズのこと覚えてたって言うから、俺達ってずっとお互い好きだったんだなって自覚して……そしたら想いが溢れて止まんなくて。俺、ほんとにお前のことが好きすぎて、いま、言葉じゃ言い表せないくらい、幸せなんだ」 俺も。 俺もおんなじだよ、理音。 そう伝える代わりに、道端だけど気にせず、俺は理音を抱きしめた。 「理音、大好きだぞ!!」 「俺も、昂平が大好き。ずっと一緒にいような」 「おう!ずっと、ずっと一緒だ……!!」 理音も抱きしめ返してくれた。 そして俺たちはそっと顔を見合わせて、キスを――…… 「ちょっとあんた達。場所を考えなさい、場所をー!」 「ほんとにもう、恥ずかしい子達!ご近所さんに見られたらどうするの!」 …………… …………… ……………え? 「「母さん(ちゃん)――っっ!!?」」 俺達の目の前には、ダブル母さんズが立っていた。 え、何?二人でどっかお茶でもしてきた帰りなの? 母親たちは俺達をスタスタと追い越すと、なんでもないように続けた。俺と理音は、驚きすぎてそれ以上の言葉が出ない。 「晩御飯までには帰りなさいよ、理音」 「今日も泊まってっていいわよ、りおちゃん」 「あらー、それは悪いわよ。それとも今日はウチに来る?昂平くん」 「それは花音ちゃんが嫌がるでしょ!いいのよウチにそんな気使わなくても」 「花音だって昂平くんのことは大好きよ?昔、理音と昂平くんと三人で結婚して一緒に暮らすのーとか馬鹿なこと言ってたんだからぁ」 「ええっ!?」 美奈子さんの言葉に反応したのは、理音だった。今の「ええっ」は、妹に嫉妬したのか、兄として俺に嫉妬したのかどっちなんだ。 理音の声に、母親二人はちらりと振り向く。 「まぁ、アンタたちが結婚するって言うのには今更驚かないけどね」 「でもイチャイチャするなら場所は考えなさいよ。まったく、若いんだからー」 「ほんとほーんと!」 きゃははは、とまるで女子高生のようなノリの二人。な、なんでそんなに軽い反応なんだ? 息子二人が禁断的に愛し合ってんだぞーっ!?

ともだちにシェアしよう!