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第130話
「そういえば俺……お前にプロポーズされて嬉しかったけど、そのあと男同士じゃ結婚できないんだって誰かに言われて、母ちゃんに泣きついたことあったな」
「え?」
「でも母ちゃん、理音がずっと昂平くんのことを好きなら大丈夫よ、って言ってくれたんだ。結婚できる、とは言わなかったけど、きっと大丈夫だって」
「……………」
美奈子さんが、理音にそんなことを……。
俺の母さんは何も言わなかったけど、美奈子さんから聞いていたに決まってる。
「母ちゃんたちもずっと知ってたんだな」
「ホントに、両想いなのを知らなかったのは俺達だけだったのか……」
「……………」
なんだか、改めて考えると恥ずかしい。でも逆に、とっくに親公認だったと思えば……うーんやっぱり恥ずかしいな。
「でもまあ、いいか。知らなかっただけで、俺達はずっと一緒だったんだから」
「昂平?」
そうだ。これからいくらでも、想いは伝えていけばいい。
伝わってなくたって、俺達は本当に、本当にずっと一緒に居たんだから。
「これからも、ずっと一緒だよな
「……うん」
「浮気するなよ、理音」
「俺はお前の方が心配だっつーの、この天然人タラシ野郎」
「はぁ?」
天然人タラシ?それはどういう意味だろうか……。理音以外にモテたって嬉しくともなんともないんだけどな。
西日を背中に浴びて、影が長く伸びている。
俺達は手の甲をこつん、とすり合わせて、どちらともなく笑い合った。
猫田くんと犬塚くん【終】
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