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番外編・カノンのお兄ちゃん
≪バンッ!≫
――あ。
≪バタバタバタ≫
「理音うるさーい!朝なんだからもうちょっと静かに動きなさい!!お父さんと花音(かのん)が起きるでしょ!!」
「無理無理!!かーちゃん無茶言うなっつの!」
お兄ちゃん、また慌てて起きてる。もうちょっと早く起きたらゆっくり出来るのに。
おかげで、わたしは毎朝お兄ちゃんの立てる騒がしい音で目が覚めちゃう。(お母さんの声もうるさいけど) でも、お兄ちゃんはいつもオシゴトと部活で忙しいから大変なんだよね。責めるのは可哀想かなぁ。
わたしが起きればいい時間までまだ1時間はあるけど、お兄ちゃんに付き合って、たまには早起きしてみようかな?
けど、その前に……
わたしはベッドから降りると、お兄ちゃんの部屋のドアをノックする。
≪コンコン≫
「……はい?」
誰もいないはずのお兄ちゃんの部屋から、お兄ちゃんよりも一際低い声がした。
≪ガチャッ≫
「おはよう、コーヘイくんっ」
「おー、おはよう、カノン。久しぶりだな」
お兄ちゃんのベッドで、当たり前のようにくつろいで雑誌を読んでいるのは、お兄ちゃんの幼なじみで、わたしのもう一人のお兄ちゃんみたいな人。
「毎朝お兄ちゃんの目ざまし係、御苦労さま!お兄ちゃんなかなか起きないから大変でしょ?」
「理音の可愛い寝顔が見れるからいいんだ。……内緒だぞ」
「あははっ、コーヘイくんは相変わらずお兄ちゃんのこと大好きだね~」
「カノンのことも好きだぞ」
「ありがとっ、二番目でもうれしい~カノンもコーヘイくんのこと好きだよ」
お兄ちゃんとコーヘイくんは、男同士だけどなんだかやけちゃうくらい仲良し。お兄ちゃんにカノジョができるのは嫌だけど、コーヘイくんと仲良くしてるところを見るのはとっても好き!ヘンかもしれないけど、すっごくお似合いなんだもん。
*
「お母さん、お兄ちゃんおはようー」
「あら?花音、もう起きたの?随分早いじゃない」
お母さんは、お兄ちゃんの朝ごはんとお弁当を用意したら二度寝する。そして、わたしとお父さんが起きる時間にまた一緒に起きる。
「たまにはわたしもお兄ちゃんに付き合って、早起きしてみたの」
「カノンーっ!!なんていい妹なんだ……頼むからずっとそのままでいてくれよっ」
朝ご飯をがつがつ食べながら、お兄ちゃんが言う。今のお兄ちゃんはホントにふつーの高校生。こんながつがつご飯食べてるところ見たら、ファンの人たちびっくりがっかりしそう。
「よし!!ごちそうさま!!」
「お兄ちゃん顔にお米付いてるよ」
「マジで!?どこっ」
「ここー」
ぷにゅ。
ほんとはお米なんて付いてなかった。ただ、お兄ちゃんのきれいな肌に触ってみたかっただけ。
「取れたよ」
「サンキューカノン!」
中身は全然前と変わらない、わたしの優しいお兄ちゃん。でも、オシゴトを始めてから外見はすっごく変わった。男の人に言うのはヘンだけど、お兄ちゃんは美人になった。お母さんは『あかぬけた』って言ってたけど、意味はよくわかんない。
わたし、猫田花音のお兄ちゃんは、ちまたではけっこう人気のファッションモデルです。
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