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「あれカノン、なんか元気なくねぇ?」
「え……そんなことないよー」
今日はお兄ちゃんはお仕事はなくて、でも部活をしているから帰りは遅い。(お仕事のときより早いけどね)でも晩御飯は一緒に食べれるからうれしい。
大きなダイニングテーブルの、わたしの席はお兄ちゃんの真正面だから、うれしいことがあってもいやなことがあってもお兄ちゃんにはすぐにばれちゃう。
わたし、そんなに顔に出るのかなぁ……。
「ほんとか?いじめられたならすぐ俺に言えよ、いじめっ子ボコボコにしてやっから」
「大丈夫だよぉ」
お兄ちゃんは、妹のわたしにすごく甘い。だからますますわたしもお兄ちゃんになついちゃうんだけど。でも、お兄ちゃんが原因でわたしがいじめられたなんて知られたら、何をしでかすか分からないからちょっとコワイかも……。
お兄ちゃんは最近お仕事をいくつか断ってるみたいで、部活の方をすごく頑張ってる。中学の頃からコーヘイくんと同じバレー部なんだけど、もうすぐ試合だからってすごく忙しそう。
でもお兄ちゃん、補欠じゃなかったっけ?
すると、同じことを思ったお母さんがお兄ちゃんに聞いた。
「そういえば理音、最近すごい部活頑張ってるみたいだけど、あんた試合出られるの?」
「よくぞ聞いてくれました!俺、今回レギュラー入りしたんだぜ!!」
え!!
「ほんとう!?お兄ちゃんすごーい!」
「だろー!?」
嬉しそうなお兄ちゃんの顔を見たら、ちょっぴり元気が出てきたっ!やっぱりお兄ちゃんはかっこいい。
お兄ちゃんを知らない子にも、お兄ちゃんのカッコよさが伝わったらいいのになぁ……。
*
≪コンコン≫
「はーい?」
ご飯を食べて、部屋で宿題をしてたらドアがノックされた。お父さんはまだ帰ってきてないから、お母さんかお兄ちゃんなのは間違いないけど。
「カノン、入っていいか?」
「お兄ちゃん!?いいよっ」
私は慌てて机から降りると、ドアを開けた。そこには、優しい顔をしたお兄ちゃんがいた。
「ごめんな、いきなり」
「ううん!!」
お兄ちゃんが私の部屋に来るなんていつぶりだろう。なんだかちょっとドキドキする!!お兄ちゃんは私のベッドに腰掛けると、わたしの方をじっと見つめた。
「……?」
実のお兄ちゃんなのに、そんなきれいな顔で見つめられるとドキドキしちゃうよっ!
「な、何?お兄ちゃん」
「カノン、やっぱ今日学校で何かあっただろ?お兄ちゃんに言ってみな」
お兄ちゃん、どうしてわたしのことが分かるんだろう。でも、いつも言い返せなかったわたしが悪いんだ。阪井くんにも、意地悪な野田さんたちにも。
「カノンが悪いの……」
「ん?」
「カノンがお兄ちゃんと似てなくて、可愛くないから」
「はぁ!?」
お兄ちゃん、そんな『はぁ?』とかファンの人の前で言ったら絶対にダメだよ。きっとその人、RIONのイメージが崩れて絶対ショック受けちゃう。
というわたしの心配はよそに、お兄ちゃんは続けた。
「カノンが可愛くないだとー!?学校でそんなこと言われたのか!?」
「まあ、近いことっていうか……カノンが可愛くないから、いくらお兄ちゃんのことカッコイイって言っても伝わらなくって……それで……」
「言った奴マジで殴る!誰だ」
「なっ、殴っちゃダメだよ!」
お兄ちゃんはモデルなのに、自分のことよりわたしが可愛くないって言われたほうがむかつくみたい。ちょっと嬉しいけど、怒りまくるお兄ちゃんをなだめるのはとっても大変。やっぱり言わなければよかったかも…。
*
「俺はかーちゃん似で、カノンはとーちゃん似だから俺達はあんまり似てないかもしんないけど、カノンは可愛いよ!女の子はとーちゃんに似たほうが美人だって言われてるんだぞ」
「でもお父さんあんまりかっこよくないよ……」
「今はおっさんだからだろ。若い頃はとーちゃんもイケメンだったって!かーちゃんに写真見せてもらうか!?」
「や、やだ」
ほんとにかっこよくなかったら、それこそ絶望しちゃう。
「大体俺はさぁ、大人のオネーサンたちが好きな感じの綺麗系モデルだから、小学生男子がかっこいいって思わないのは当然だと思うぜ」
お兄ちゃんはあっけらかんとしてそう言う。
でも……
「お兄ちゃんはかっこいいもん」
「カノン」
「カノン、ウソつきじゃないもん!」
お兄ちゃんを知らない子にまでばかにされるのは本当にむかつく!
「……うーん……」
「それにお兄ちゃんはカノンのこと可愛いって言ってくれるけど、それはお兄ちゃんだからでしょっ」
身内の欲目って言うんだもん。わたしがお兄ちゃんをかっこいいって思うのは当然だけど!
「じゃあ、兄ちゃんじゃない奴の意見も聞いてみるか?」
「えっ?」
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