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 お兄ちゃんはわたしを連れて近所のコーヘイ君の家に来た。もう夜の8時なんだけど、いいのかなぁ。お母さんが電話してくれたみたいだけど……。 「あらー、りおちゃんにカノンちゃん!こんばんは、いらっしゃい。二人が揃ってるのって珍しいわねぇ」 「こんばんは、千恵さん。昂平います?」 「いるけど、ほんとにあの馬鹿に会いにわざわざ来たの?カノンちゃんまで?」 「はい」  コーヘイ君のお母さん、千恵おばさんが出迎えてくれた。千恵おばさんは看護師さんなんだけど、今日は夜勤じゃないみたい。 「あがってあがって。コーヘイー!!りおちゃんとカノンちゃんよー!!」  千恵おばさんは二階に向かって言った。すると、コーヘイくんが階段の上から顔を出した。 「理音と……カノン?」 *  コーヘイくんは自分の勉強机の椅子に、わたしとお兄ちゃんはコーヘイくんのベッドに腰かけさせてもらっている。コーヘイくんは大きいから、ベッドも大きい。お兄ちゃんもおっきいけどね。 「なあ昂平、兄貴じゃなくても一般的に見てカノンは可愛いと思うよなぁ?」 「はぁ?当たり前だろ」  がくーっ!  まあ、ここに来た時点で予想はしてたけどね。コーヘイくんもお兄ちゃんと同じような存在なんだから、コーヘイくんに聞いたって意味ないじゃない!ほとんど身内なんだから! 「安心しろカノン、昂平はアホだから基本正直なことしか言わねーぞ」 「えええ……」  コーヘイくん、お兄ちゃんよりずいぶん勉強できるはずなのにちょー馬鹿にされてる。 「カノン、お前は可愛いぞ。ただし理音の次にだけど」 「はあああ!?お前何言ってんだ!」 「正直なことしか言ってないが?」 「カノンの前でやめろぉぉ!!」  コーヘイくんの逆襲きたー……ああもう、二人とももう好きにしてってかんじ。わたし、まるでお邪魔虫みたい。ほんとにラブラブなんだから! 「というか、なんでわざわざそんな分かりきったことを聞きに来たんだ?しかもこんな時間に。俺はかまわないが」 「それがさー」  お兄ちゃんが、コーヘイくんにわたしが今日学校で言われたことを説明してくれた。 「ほう…カノン、やっかいなのに好かれてるな」 「好かれてる!?カノンは阪井くんに嫌われてるんだよっ、いつもカノンにばっかり意地悪なこと言うの!」  お兄ちゃんには言わないつもりだったけど、今はコーヘイくんもいるからどんどん愚痴が出てきちゃう。(お兄ちゃんを止めてもらえるから) 「好きな女の子を苛めるというのは、小学生男子の常套手段というか、お約束みたいなものだからな」 「でもコーヘイくんは小学生のときお兄ちゃんのこといじめてなかったよ!?」 「俺は理音を守るヒーローだからな。理音も可愛かったからそりゃー男子にいじめられてたもんだ」 「へぇー」 「おい、変な前提で話進めてんじゃねぇ」  お兄ちゃんが突っ込んだ。 「カノンが可愛い問題は解決したとして……理音のかっこよさをクラスメイトに認めさせたいんだっけ?それは別にいいんじゃないか」 「どーして!?」  てかわたしの可愛いモンダイって何!?まったく解決してないしね!  お兄ちゃんはコーヘイくんの言葉にウンウンってうなづいてる。 「人には好みってものがあるからな。女子はともかく、小学生男子にはまだ本格的な人間の美醜はわからないだろう。自分の好きなアイドルが世界一可愛く見えていて、そのアイドルよりも遥かに綺麗な女優はどこが綺麗なのかわからない、みたいな」 「うう……」  確かに、それはコーヘイくんの言う通りかも。 「俺やカノンには理音が世界一美しく見える。それでいいじゃないか?」 「オイ、んな恥ずかしいこと真顔で言うな」 「……」  コーヘイくんの言うことは分かるけど……うん、分かるんだけどね。  でもやっぱり、お兄ちゃんがかっこよくてきれいだってことが嘘じゃないことはわかってもらいたい……わたしのワガママなのかなぁ~。 「納得してないって顔だな」 「……だって……」 「じゃあカノン、今週の土曜日うちの高校でバレーの試合があるから、そこにクラスメイトを連れてきたらどうだ?カッコイイ理音がいっぱい見れるぞー」  えっ? 「げっ!!」  お兄ちゃんが焦った声を出した。 「ちょ、昂平!!千恵さんとかーちゃんとカノンだけなら応援に来るのはまだしも、カノンのクラスメイトってのは別にいいだろ!!もし負けたりしたらカノンがまたいじめられるかもしれねーんだぞ!!」 「負けなければいい。俺は負けるつもりはない」 「簡単に言うなよ!俺、初レギュラー入りの試合なんだけど!!」 「ほどよくプレッシャーがかかっていいだろう?」 「よくねーよ!!」  お兄ちゃんの試合に、阪井くんや野田さんを連れてくる!?  い、いいかもしれない!!  来てくれるかどうかわかんないけど、お兄ちゃんが活躍してくれたら、ほんとにわたしのお兄ちゃんはカッコイイんだってことが証明できるよね!?活躍できなかったとしても、動いてるお兄ちゃんは写真で見るよりもずっとかっこいいし。  よし!わたし、決めた!! 「試合頑張って!!お兄ちゃん!!」 「カノン、マジで連れてくる気か!?」 「来てもらえるようにがんばって交渉してみる!!」 「マジかよ……」  お兄ちゃんは絶望的な顔をして、昂平くんはそんなお兄ちゃんを見てニヤニヤしてる。わたしは両手をぐーっとにぎりしめて、自分から阪井くんや野田さんに話しかけるのはめちゃくちゃ嫌だけど、がんばろう!!と心に決めた。

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