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「…...だからお願い、土曜日お兄ちゃんの高校にバレーの試合を見に来てほしいの!」
次の日の休み時間に、わたしは勇気を出して大嫌いな阪井くんの席にわざわざ行って、今週土曜の試合を見に来てもらうように頼んでみた。
案の定、阪井くんはすっごく嫌そうな顔をした。
「やだよ、めんどくせーっ!なんで俺がわざわざお前の兄貴の試合なんか見に行かなきゃいけねーんだよ!俺はそんなに暇じゃねぇし!」
「阪井くんにきょうだいがいるのかどうか知らないけど、わたしがいちいちお兄ちゃんの話するたびに絡んでくるの正直迷惑なのっ!だから阪井くんにお兄ちゃんのカッコイイとこ見てもらって、それでかっこよかったらもう文句は言わないで!もしかっこよくなかったら……」
「なかったら?」
「べ、別に文句言ってもかまわないけどっ……」
大丈夫だよね?お兄ちゃん。お兄ちゃんはかっこいいもんっ!!
私の言葉に、今度はニヤニヤしている阪井くん。何か企んでるみたいな顔……やだなぁ。
「文句を言うのは当たり前としてだ。この貴重な休みに俺をわざわざお前の兄貴の試合を見にこさせるってんならなあ、それなりの見返りが必要だって分かるか?猫田」
「み、みかえり?」
阪井くんはニヤニヤ笑うのをやめない。そばで聞いている他の男子もにやにやしている。
何を言われるのか分からなくて、わたしは身構えてしまう。
「賭けようぜ。お前の兄貴の高校が勝ったら、俺はお前をいじめるのはやめてやるよ。けど負けたら、お前これから俺の言うコトなんでも聞けよな!来年もだっ」
「えっ?」
「いいな!決まり!!」
「え、ちょっと待って!」
な、なんでも言うコト聞くって、阪井くんの!?そんなのやだ!!
阪井くんは意地悪だから、きっと逆立ちして廊下歩けとか、先生に逆らえとか言うに決まってる!それで六年生になるまで、わたしのことをいじめるつもりなんだ!!
「それ、おもしろーい!花音ちゃん、わたしものったー!」
「え!?」
それは、さっき声をかけたけど『見に行くのは絶対に嫌!』って言ってた野田さんだった。 それなのに、阪井くんの言い出したとんでもない賭けに、参加しようとしてる。
もしお兄ちゃんたちが負けちゃったら、野田さんのいうことまで聞かないといけないの!?そんなの絶対やだ!!
「断るなよ?猫田。言いだしっぺはお前の方なんだからな!行ってやるよ、バレーの試合」
「土曜日が楽しみだねぇ、花音ちゃん」
「……!!」
お兄ちゃん……コーヘイくん……
カノンは、とんでもない賭けをしてしまったかもしれません。
でも……でも、大丈夫だよね?
カノンはお兄ちゃんとコーヘイくんを信じてるもん!!
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