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「ね、猫田!?」  ウサギさんと手を繋いで体育館に行こうとしたら、後ろから知ってる声がした。振り向いたら、そこには阪井くんと野田さん、ついでに福田さんの三人が居た。 「だ、誰だよそいつ!何で手なんか繋いでんだよ!!お前、ブラコンじゃなくてただの男好きだったんだな!明日みんなに言ってやるっ!」 「花音ちゃん、高校生のカレシなんていたんだー、なんかやらしーっ」 「ねーっやらしーっ」  からかわれて、恥ずかしくて、思わずウサギさんの手を離そうとしたけど、ウサギさんはギュッとわたしの手を握りしめて離してくれなかった。  不思議に思ったわたしは、ばっとウサギさんを見上げる。ウサギさんは、なんだかいたずらっ子みたいな顔で笑って三人を見ていた。  そして。 「君さー少年、そんな態度じゃ一生かかっても好きな子は落とせないよ?いじめて気を引こうなんてさいっこーにカッコ悪いからね。もしかして気付いてないのかな?だとしたら本物の馬鹿だね。そこの女子二人もさ、俺らは別にヤラシイ関係とかじゃないから。もしかしていっつもカノンちゃんにそんな風に意地悪してるわけ?そんなことばかりしてたら一生彼氏なんてできないよ。少なくとも俺はごめんだね」 「う、ウサギさんっ……!!」  そんなこと言ったら、阪井くん達暴れるかもっ…!!と、思ったんだけど。  三人はウサギさんに言い返せないみたいで、すごく悔しそうな顔で下唇を咬んでいた。あの阪井くんまで黙らせるなんて、ウサギさんすごい!! 「じゃあカノンちゃん、行こうか」 「は、はい」 「猫田ぁ!!賭けのこと、忘れんじゃねーぞっ!!」  阪井くんが後ろから怒鳴るように言ってたけど、わたしは振り向かなかった。そしたら、ウサギさんがわたしに聞いてきた。 「賭けってなんのこと?」 「……今日の試合でお兄ちゃんたちが負けたら、なんでも言うコトきけって言われてるんです。勝ったら、もういじめないからって」 「ええ?それって理音くんとわんこは知ってるの?」 「知らないです。…ウサギさん、言わないでくださいね?ヘンなプレッシャーかけたくないんです。……それにわたし、お兄ちゃんとコーヘイくんを信じてますからっ」 「……わかった。もし負けたとしても、俺があいつらをなんとかしてあげるからね、気にしちゃダメだよ」 「……?」  ウサギさん、何してくれるつもりなんだろう…?わかんないけど、そう言ってもらえてすごく安心した。  本当はこの日が来るまで、ずっと一人で抱えてて苦しかったから……。 「ありがとう、ウサギさん。その、さっきも阪井くんたちに言い返してくれて……カノ…わたしが自分で言い返せたらいいんだけど、なかなかすぐに言葉がでてこなくって」 「ははっ、自分でも小学生相手に大人げないなーとは思ったけど、いじめられてるのが理音くんの妹さんなら放ってはおけないからね」 「ウサギさんも、お兄ちゃんのこと好きなんですか?」  なぜか、なんとなくそう聞いてしまった。『も』っていうのは、もちろんコーヘイくんのこと。 「えっ、それはどういう意味?。まあ普通に好きだけど、友達としてだよ?っていうか、俺はもともとRIONのファンだから。ほんとに好きな人は別にいるよ……振られちゃったけどね」 「えっ、そうなんですか!?」  ウサギさんこんなにきれかっこいいのに(綺麗+かっこいい)、それでも振られちゃうんだ!?相手の人、一体どんな人なんだろう。あ、男の人なんだっけ。 「ふふ、理音くんとワンコには内緒にしてね」 「あ、ハイ……」  お兄ちゃんたちにも言ってないんだ、ウサギさん。そんな重大なことをわたしが知っちゃってもいいのかな?

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