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第4話
そのオメガのことは正直何とも思っていなかった。
なんともないというより、どうでもいい。
綺麗なオメガだったがそれだけだ。
同じ学年の、オメガ。
それ以上の意味はなかった。
入学式から彼を見つけたので、他のオメガに目をやる必要もなかった。
だが、オメガもまた、アルファを探しているのだ。
そのオメガに気に入られていることは気付いていた。
話かけられもしたし、何かと関わってこようとした。
アルファ達が狙っていたオメガだったし、他のアルファとの競争という意味では彼と出会ってなければ選んでいた可能性は否定できない。
有力な実家を持つオメガだったし。
彼と出会ってなければ兄姉達と同じようにより有力な家のオメガであることも考慮したかもしれない。
アルファとオメガの間にはアルファとオメガが生まれやすい。
オメガが有力なアルファの家系出身なことは良くあるのだ。
色んな意味でいかにもアルファが選びそうなオメガだった。
美しくて自分以外のアルファには絶対に媚びないような傲慢さもあって、組み敷き支配するのが楽しそうな。
他のアルファを出し抜いて手に入れるのなら、さぞかし満足しただろう。
でも、もう彼がいた。
だからどうでも良かったのだ。
それを態度で示したのに、オメガはなかなか諦めず、そろそろ卒業か見えるようになっていた。
学園のオメガ達は大抵が相手を見つけていた。
そのオメガはあまりにも、一人のアルファに固執し過ぎて、相手がいないまま、卒業しそうだった。
もう、有力なアルファはとっくに番を定めて、オメガに安らぎを求め、それ以外の全ての時間を戦うために当てている。
そう、いわゆる、オメガか好みそうなアルファはもう、品切れになっていた。
自分に固執しすぎていなければ、相手は見つかっただろうに、とは思ったが、まあ知ったことではなかった。
だがオメガらしいオメガなのだし、相手を選びさえしなければ誰か見つかるだろうし、気に止めるほどのことはなかった。
だが。
気にするべきだったのだ。
オメガを侮りすぎていた。
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