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第5話
「先に帰ってて」
彼に言った。
生徒会の仕事があった。
会長だから仕方ない。
彼と帰れないのは残念だったが、帰りに彼の家に寄ると言っておいた。
キスして勉強するだけだが、それでも彼といるなら楽しい。
それにもうすぐだ。
彼を自分のモノにする。
その身体を味わい、喰らって、中を満たす。
ぞわりとした戦慄がそれを考える度に走る。
しかもそれは互いに発情した状態で。
その感覚は知ってる。
あがらえなくなるほどの衝動だった。
でも、それは、まだ発情しかけの状態しか知らない。
離れた距離にいた見知らぬオメガから触発されたものだった。
生まれて初めて自分を怖いと思った。
見知らぬ大人を犯したいと思ったのだから。
沢山の人達かいるのにその人におそいかかってその場で貫きたいと思った。
それは僅かな間だったけれど、現実で。
生まれて初めてオメガを恐れた日でもあった。
アルファ達が出歩く時に即効性の注射タイプの抑制剤を持ち歩く意味がわかった。
その時はそのオメガが自分でそれを打つことで、回避できたけれど。
オメガのフェロモンを止める以外に、そこから逃げる方法はない。
アルファは発情したオメガには完全に無力なのだと思い知らされた。
自分の意志など無いも島前だった。
あの強い衝動。
それと彼への愛しさが一緒になるのだということは、アルファであっても怖くもあった。
オメガの彼ならなおさらだろう。
だが。
その時が待ちきれなくもあった。
自分の中の獣が解放を待っている。
アルファはオメガを犯すために存在しているのだと思い知らされる。
でも、そこには愛がある。
彼を愛していた。
彼の無邪気さ。
平凡さを。
互いの獣を受け入れることか出来ると思っていた。
愛故に。
会議を終えて、一人少し残って議事録をチェックしていた。
いつものことで。
もうすぐ終わるはずだだった。
皆がいなくなった、もう一人きりの生徒会室のドアが開いた瞬間、それは起こった。
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