6 / 10

第6話

甘く重い匂い。 「うぐっ」 思わず呻いた。 身体の毛穴が全て開き、血液が脈打つように流れでいた。 瞳孔が開き、匂いは脳を焼き切るようだった。 完勃ちしていた。 ズキズキと痛むようなソレを体験したのは2度目だった。 発情したオメガがいる。 すぐ近くに。 恐怖で悲鳴をあげた。 何かが自分の奥から這い出てこようとしていた。 ドロドロとした、マグマのような感情に支配される。 止めてくれ。 嫌だ。 許してくれ。 近寄るな。 どこかへ行け!!! 叫んだのはアルファだからこそだ。 自分の意志じゃなくオメガを抱くなんて、アルファとして恥ずべきことだ。 懇願すらした。 頼む。 止めてくれ。 恋人がいる。 愛しているんだ。 泣いて頼んだ。 アルファのプライドもかなぐり捨てて。 だが、生徒会室のドアを開けて。 ソレは近づいてくる。 ソレもまた飢えているのかわかった。 ソレは発情しきったオメガ。 何度も自分にアピールしてきたあのオメガだった 制服のシャツをもう脱ぎ捨てていた。 白い滑らかな胸に、もう尖った乳首がこれ見よがしに飾られていて、齧ってしまいたいと思った。 ベータの女性では感じないこの身体から感じる飢え。 オメガの身体はアルファには男でも女でもなく、オメガなのだ。 後ずさりして気づく。 オメガの左腕に包帯か巻かれていた。 ああ、そんな。 そう思った。 オメガは自分でカプセルを皮膚を切り裂いて取り出し、発情が来るのを待って、そしてここへ来たのだ。 自分をアルファに抱かせるために それは。 このオメガがコレを止めるつもりがないことを意味していた。 いや、ここまで来てしまったなら、もう止めることは出来ないだろう。 オメガは入れて欲しくて穴から滴らせているだろうし、アルファも穴に入れたくて先から零しているのだから。 「来るな!!」 それでも叫んだ。 甘く熟れたオメガが近づいてくれば、もう齧らずにはいられないからこそ。 涎が零れた。 アルファの尖った犬歯が剥き出しになる。 自分は獣なのだと思い知らされた。 それでも叫んだ。 「嫌だ!!」 そして助けを求めるように恋人の名前を呼んだ。 彼の名前を。 何度も何度も。 でも。 甘く重く匂う、彼とは似ても似つかぬ匂いのオメガがズボンや下着まで脱ぎ捨てて、近寄ってきたから。 美味そうなベニスで、濡れた股で歩いてきたから。 白い腕を伸ばしてきたから。 襲いかかった。 喰らいつくすために。 だって、これは。 オメガだ。 喰らうしかない。 咆哮を上げて、押し倒し、その身体に乗り上げた もう。 止まれるわけがなかった。

ともだちにシェアしよう!