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第19話 儚那の胸中

 あの時はただ身体が切なくて、そこにどんな意味があるのかも知らずに求めてしまった。    けれど今さら言い訳がましいことだが、本当にあそこまでされるとは思わなかったのだ。    蘇芳という男、シレッとした顔をしながらやりたいことはやってくる。 「バカバカバカ! あああもううぅ……」  しかも物の本によれば、アレもコレもソレもつまるところ、あの祭りの夜に聞いた『愛の交歓』とやらのことではないか。  「──はッッ!!」  唐突に刮目した。  なんとすれば、では鵺があのとき自分に求めてきたものも、つまるところ、つまるところは例の武器のようなアレをアレしたかったからではないかと今になってようやく気がついた。    「あああああ……!」  愚かだ、あまりにも自分が愚かだ。  鵺は酷いやつだ。ろくに愛情もない人間を相手に、下手をすれば子供ができるようなことをしようとしたのだから。  何故そんなことをしたかといえば、それはそう、快いから。  確かにあれは快い気がした(というか実際かなり快かった)。 「……だがしかし!!」  儚那は頭を抱えた。  だがしかし、快いなどそんな愚にもつかない理由で、仮にも王太子の自分が婚外児を腹に宿したなどということになったらこれはもう大変な素行不良であるし、国家に対する甚大な裏切り行為とさえ言える。列国に知れたら国単位で(あなど)られ、攻め入ってこられるかもしれない。  鵺とはなんという悪辣な男なのか。  しかもその悪辣行為を、あろうことか自分は臣下に命じてしまった。権力にモノを言わせて愛してもいない自分の体を何とかしろと強要したのだ。  臣下が従順なのをいいことに陵辱してしまった。これでは鵺と同じではないか。自分はなんと酷い男なのだ。すまない蘇芳、そなたの純潔をすまない。心を無視してすまなかった。  などということをぐるぐるぐるぐる、阿呆のように考えている。

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