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(R18・読み飛ばしも可能)第74話 月虹国の恋姫⑤ 

「や、やだっ……」  あらわになりそうな足の付け根に、衣を引いて必死に隠した。 「私は元来、さして気の長い方ではありませんでね……」    言い終わらぬうちにも、秘めたところを隠す手の隙間から二本の指が入り込んだ。その指が、熱を帯びて喘ぐ女のそこにつうと差し込まれていく。 「ひっ……!」  ただでさえ感覚が鋭くなっているところへ、唐突にそんなことをされては気がおかしくなりそうで、 「あっ……ぁ……」  かき混ぜられているうちに、熱い痺れが身体の奥から湧き出してきた。 「は、……花蜜のように溢れて、吸い付いてくる……」  呟いて、注がれる視線に耐えられなくなる。 「あんまり見ないで……眼鏡(それ)、外してぇ……」 「嫌です。もっとよく見たい」  入り口を指の腹で擦り付けるように弄ばれると、痛いほどの快感がじぃんと奥に溜まっていく。  そのまま胸の先を指で弾かれ、か細い悲鳴を上げた。  腰からのぼる甘い痺れに背中が浮きあがる。   何度もそれを繰り返されると、自分ではないような声が漏れた。 「ぁっ……あんっ……」  突き立てられた指の動きが激しくなっていく。  もうあと一度、奥を触れられたら弾け飛ぶ。そう思ったとき、指がスッと抜き取られた。 「あっ……」  思わず惜しむ声を漏らすと薄笑いが見えた。 「そんな顔をされると、いじめたくなるな……」 「や、……も、もうっ……」 「仕上げは指ではなく──」 「え?」  蘇芳はばさりと官服を脱ぐと、中に身につけていた白衣も脱いで上半身をあらわにした。  その手が下帯にも掛けられる。 「あ……」  その意味が、経験のない儚那にもわかった。 「や、やだ、怖い……!」 「怖い?」  蘇芳が意外そうに片眉を吊り上げ、 「千の敵兵を前にしても、怯まなかった貴方が?」  くすっと困ったように、やや笑んだ。  そんなことを言われても、怖さの種類がまるで違うのだから仕方ない。  蘇芳は覆いかぶさると儚那の首の横に顔を埋めた。 「大丈夫。慣れれば、指よりずっとよくしてあげられる……」  耳に息のかかるところで囁かれ、 「っ……」  あれ以上のものがあるのか──と、一種、興味の方が上回った。  その一瞬に、女のそこへ熱いものが押し当てられた。 「ひ、……」  抵抗する間もなくそれが中に押し込まれていく。  初めのうちは、それほどのつらさはなかった。けれど途中で鋭い痛みが走った。 「あ、あああっ!」  身をよじって逃れようとしたが、 「ひい様……」  しっかりと腰をつかまれて、逃れたくとも逃れられない。 「私のものだ……ひい様」  うっとりとした吐息が首にかかった。 「もう二度と、誰にも触れさせない。私の……」  持ち上げられた片足をさらに広げられ、蘇芳がぐいと沈み込んだ。 「──私だけのものだ」 「……ぁああっ!」  凄まじい圧迫感と痛みに眩暈がした。天地が逆さまになって、目の前がぐるりと回る。   それだけで限界なのに、沈み込んだそれがゆっくりと奥を突き始めた。 「も、やめっ……お願……っ」  死んでしまう、そう思って、泣いて許しを何度も乞うた。 「ああああっ……!」 「ひい様……かわいい」  けれど、あるところを突かれた時に身体が痛みとは別のものをつかんで、腰が浮いた。    すると気付かれたように、そこばかりを繰り返し突き上げられる。 「ぅ、……ああっ……」  薄ぼんやりと滲む景色の中で、自分とはかけ離れた肉体の脇腹に、まだ生々しく残る傷痕を見つけてそっと指先を触れた。  すると蘇芳の口もとが、少し震えて眉を寄せた。まだ痛むのかと思ったとき、身体の奥に埋め込まれたものが益々張り詰めて大きくなった。  苦しくて身を捩る。するとさらに激しく打ち付けられた。  一度手放した甘い痺れが熱に抱かれて戻ってくる。  たまらない切なさに、体に力が入るのが自分でもわかった。 「ひい様」 「は、……」 「涎が垂れていますよ?」  湿った舌が儚那の唇の端を舐め取った。 「ひい様?」 「──」  音も景色もどこか夢の中のようにぼやけて、もうよくわからない。 「聞こえていますか?」  くすくすと笑う声だけがやけに鮮明に聞こえた。  そのまま男の部分を愛撫され、震えるほどの快感が走る。自分の意志ではないものに操られるようにその腰を挟み込んで、絡めた足に力が入った。  同時に胸の先を爪で乱暴に掻き立てられて、濃密な痺れが全身を貫いていく。 「ぁっ……ああぁ!……ぁ、……ぁっ……」  きゅう、と奥を締めて貪欲に感じ取ろうとする体とは反対に、意識がどこかへ遠のいていく。  ゆるゆると波が引き力が抜けていく頃には、体中がぐったりとして、脚はがくがくと震えていた。 「もう終わりですか?」 「ぁ……ぅぁ……」 「ああ全く、かわいいな……。では今度は、私が満足させていただこうか」  蘇芳は汗に濡れた眼鏡を外すと、儚那のもう片方の脚も持ち上げ、さらに深く沈み込んだ。

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