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#スイーツ男子のお相手は色彩鮮やかで繊細なマカロンのような彼⑥
翌日の授業はお坊さんのお経くらい頭からすり抜けて一声も脳がキャッチしてくれない。
それもそのはず、画面の中の王子様が突然目の前に現れて"恋人になって"なんて展開は男の僕に起こり得ない事だからだ。
「あー、こりゃアカンなぁ」
「ホントだね。今日一日完全に心ここに在らずだね。可哀想な暖ちゃん〜」
「思ったより重症やな」
授業中、黒板の一点を見つめて動かない暖を見て明希といつみは心配そうにヒソヒソと話している。"今日はここまで"と先生の教科書をトンっと揃える音で金曜日の5限が終わった。
「暖!終わったで。いつまで黒板見てんねん」
『……あっ、本当だ』
「昨日何があったか、、俺にはわかってんで」
『えっ、!?な、なっ何で?!明希が知ってんの!?』
「アレやろ?担任にこっ酷く言われたんやろ?その感じからすると、、あっ志望校下げろとか言われたんちゃうか?」
『、、担任……志望校…?』
その後の出来事が強烈過ぎてすっかり頭から消えていた進路面談。昨日の事と言われ、つい夜での出来事を思い出し焦ってしまった。
『あー…そうそう!色々言われちゃってそれでちょっと考えてた。でも大丈夫!今から本気でやればまだまだ可能性はあるって』
「そっか。ほな今日は久しぶりに息抜き行くで!」
『息抜きって何?』
「じゃーん!昨日バイト先の先輩に焼肉店の半額券もらったんや。三人で行かへん?」
「いいね、賛成!私ダイエット中だけど今日辞め!ってかこの店高級焼肉店じゃない?」
『焼肉かぁ』
「甘いもんやなくて悪いけど食べて元気つけようや暖!なっ、行くやろ?」
そう言って肩に置いた明希の手はいつも優しさと気遣いがある。隣にいて元気づけてくれる。僕も明希といると安心感を抱いているのも確か。
『うん、わかった行くよ』
「ほな決まりやな!」
授業終わり地図アプリを開きながらお店を探す。お店はなかなか普段足を踏み入れない歓楽街はネオンがギラギラで昼間のような明るさ。
未成年の僕らが到底入れないであろう、いわゆる"水商売"のお店がひしめき合っている。
『本当にこんな場所にあるの?間違ってない?』
「地図やと……もうすぐやわ」
『ねぇ、なんか二人普通にしてるけど、、こうゆう場所平気なの?……なんか怖くない?』
「そう?私は何回も来てるし別に平気かな?」
「別に三人おるしなんて事ないやん。ってあった!この店や」
路地裏に入るとすぐ発見したお店。真っ黒なシックな外観に小さく木の看板に店名が書いてあるだけ。明らかに分かる高級感に緊張しながらお店に入った。
店内全てが個室になっていて圧迫感のないゆったりした6人掛けのテーブルに座る。焼肉店特有の煙たさやガヤガヤした声は聞こえない。
「ねぇ大丈夫かなー…思った以上に大人なお店じゃない、、?」
いつみの言う通りメニュー表を開くと想定の三倍の数字、中には金額表記の無いものもある。僕らは黙って一瞬固まった。
「だ、大丈夫や!!俺らには半額と言うこの魔法の券があるんや……からなっ」
『明希〜素直にいいなよ〜。想像より遥かに高かったってさ。でもありがとう僕の為に気を使ってくれて。約束する!次の模試でC判定以上に成績あげるから!』
何だか余計な心配ばかりかけてる二人に申し訳なくて勢いで行ってしまったけどやるしかない。
メニュー表を開いて一ページ目のデカデカと載ったお肉が目に入る。
『すいませーん。この特上シャトーブリアンを3つお願いします!』
「ばっ、バカっ!暖っ何言うて、、」
注文は席に付いたマイクでする。"かしこまりました"と店員の返事が返ってきた。前に座った二人は顔を見合わせであんぐりと口を開けた。
『よしっ今日は食べよ!ん?二人どうしたの?ところでシャトーブリアンって何?』
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