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#スイーツ男子の本音はショートケーキの様に誰からも愛されたい⑤

 『、、ごめんなさいっ!』  「そんな謝んないで。別に怒ってないよ。でも、、この感情は何だろう?もしかして妬いちゃったのかも」  『え?……どういうことですか?』  「わかんない?だとしたら君は相当鈍いね。だから、君と彼がくっついて歩いているのを見て嫉妬したって事」  『、、嫉妬?』  19年間生きてきて初めて言われた。今まで誰からも興味を持たれたことない僕に嫉妬する人がいることが不思議でならない。  「だって仮であっても君は僕の彼氏でしょ」  『……あ、いやだからそれは断ったじゃないですか!メール見ましたよね!、っわっ!』  突然視界が遮られ頭がズンっと重くなった。何かをかぶせられたようで訳もわからず慌てて手探りで彼の手を掴んでいた。  「ちょっと何するんですか!」  「ん?何ってヘルメットだよ。雨も止んだしドライブ行こうよ」  『もうっ何なんですか!、、行きませんしもう帰らないといけないんで』  「雨上がりのドライブってすごく気持ちいいんだよ、知らないでしょ?じゃぁ教えてあげる」    そう言ってフルフェイスのシールドを上に上げると彼が体勢を低くして目線を合わせてきた。顎の下のストラップに手をかけ装着しサイズを合わせる。その間僕は彼のきれいに染まったピンクの髪の毛1本1本を間近に見ながら早くなる心臓の音を聞いていた。  「はいOK!後に乗って」 彼が僕の手を引いて後部座席をポンポンと叩いた。もう彼に逆らえないと言われたままシートに座る。  「、、ねぇそれ冗談じゃなく本気?」  『えっ?何がですか、、?』  「それだと100%落ちちゃうと思うけど」  『……バイク乗るのとか初めてなんで』    跳び箱の上段にまたがってあたかも飛んでるかのように、左右の足を広げて座席シートの前に手をついている暖。  「足は曲げてここのステップへ。もっと前に座って身体をくっ付けて。そして腕はここね!」  運転席に座った彼はそう言って僕の足をステップに乗せ、腕を掴んで自分の腰に置いた。彼の背中に体をピタッと寄せるとひんやりして少し濡れたジャケットの雨粒を感じる。  そしてバイクが動き出した。言葉はなくただ走り続ける。落ちまいと彼にしがみつくようにぎゅっと腰に絡めた腕に力を入れる。  「大丈夫?」  『、、ちょっと怖いけど……楽しいです』  「そう。それならよかった」  こんな未来は誰が想像しただろうか。生きる世界の違う彼とバイクの2人乗りして雨上がりの道路の水を強く弾いている。 まだ20年も生きていない僕の人生のピークはここだろう。心の奥底に眠っていた知らない自分が顔を出した瞬間か。彼と一緒にいるといろんな世界に触れて知らないことを経験して見たくなった。  今まで平凡で語れるような人生でもなかったのだから、それぐらいのわがまま神様も許してくれるよね。  『あのー…あの話、、』  「ん!?何?聞こえないんだけど」  密着していてもヘルメットと周りの車の音で声が聞こえづらく彼は少し声のボリュームを上げて顔を近づけて聞き返した。  『だから、そのー…やります!あなたの彼氏になります!』  「……そっか、やっと決意してくれたね。正直、その言葉を聞くまで家に返さないつもりだったんだけど」  『そうなんですかっ!?ホントあなたは、強引だし何考えてわからなー…』  「あなたじゃなくて大我!これからはそう呼んで。よろしくね、暖」  いつもならうるさくしか聞こえないバイクのエンジン音も今は夜曲(セレナーデ)を奏でているかのように情熱と高揚感に変わり世界は僕ら2人のオーケストラになった。  指揮者の彼が振るタクトは細くて繊細だ。僕は、そのタクトに続いて合わせるように音を鳴らすバイオリニスト。  "彼がタクトを下ろすまで僕は音を鳴らし続けるよ"  結局、数10分で家に帰るつもりで出てきたにもかからずニ時間後に帰宅した。"何してたの?"と母親に聞かれたが"ちょっとね"とスルーして二階に上がった。 座ったシート、ヘルメットの重さ、腰に回した腕の感覚。そして"暖"と名前を呼んだあの声。 その全てがスイーツを体に取り込んだときのあの幸福感に似ていたー…甘いスイーツのような彼に。  そして、僕と大我(カレシ)の誰にも言えない期間限定な不思議な関係が始まった。  

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