25 / 46
#スイーツ男子のお仕事はチョコミントアイスの冷たさと刺激と賛否の交わり②
『うん大丈夫。ありがと要望に応えてくれて』
「ん?もしかして顔出しの事?やっぱり大勢の人に顔晒すのは嫌?」
『だって僕なんかが画面に、、しかも大我の隣に居るなんて誰も見たいと思わないよ…』
「そうかな。暖はよく自分のこと僕なんかって卑下してるけど全然そんなことないじゃん。まぁでもある意味それが暖のチャームポイントなのかもね」
『チャームポイント?』
「なんかさ、こういう配信の世界ってみんな自分に自信満々で自分を見て見て!って人ばっかりだからさなんか疲れちゃって」
『、、大我は好きで配信やってるんじゃないの?』
暖のその言葉を聞いて"何か飲むものを持ってくるね"とキッチンであろう隣の部屋に入っていた。まずい質問しちゃったかな、、と近くにある椅子に座って待った。
「はい、ケーキとジュース!」
『えっケーキなんて用意してたの?』
「そう。今日は付き合って1日目って記念の日のお祝い!」
『、、、付き合って1日目記念?』
戻ってくるなり何やらおめでたい言葉と手に持ったホールケーキ。まだ誰とも付き合ったことない暖とってはこの言葉は初めての響きでピンとこない。
「あーごめんごめん、偽の記念日ね!」
なぜか付き合った記念日と聞いて気持ちが浮ついてしまった。だけどすぐに"偽"と言う現実の言葉に少し落胆してしまったのはどうしてか。
「はいケーキどうぞ」
『ん?大我は食べないの?』
「俺はいいよ。暖が全部食べちゃって」
真っ白でゴールドのラインが縁取った丸いお皿にフォークが1つ乗せられている。4人分ほどの丸いシンプルなスポンジケーキは1人で食べるには到底多い。
もちろん一緒に食べるものだと思っていたけど、彼は机に肘をついて僕に食べるのを促すようにコーヒーを飲んでこっちを見ている。
『それじゃー…いただきます』
「召し上がれ!」
『ん〜これ美味しい♡中にフルーツがいっぱい入ってる!』
ケーキにフォークをさすとふんわりとした断面から生クリームと数種類のフルーツが顔を出した。
「暖はほんとにスイーツ好きなんだね!こんなにおいしそうに食べる人初めて見たよ」
『えっまぁ、、唯一の趣味だから』
「そういえばレビューの投稿面白かったのにやめたの?」
『み、見てたの?』
「そりゃ見るでしょ、だからこうやって今一緒にいるんだから」
しばらく頭から離れていたけど、スイーツレビューのアカウントは停止したまま鍵をかけて親しい人にしか見れない状態だ。
『、、そうだった。その事だけどちゃんと謝らなきゃって思ってた。僕のせいでその、、恋人と別れちゃったんだよね』
「……マコトの事!?」
その時の記憶を戻すと幸せな舌への味覚がなくなっていく。彼は出会った時から、僕にそのことを問い詰めたりすることもなく被害者の彼がどうして僕にこの仕事に誘ったのか一度聞いてみたかった。
「その事なら気にしないで。確かに暖のあの投稿が原因で別れたのは間違いじゃないけど、正直それがなくても近いうちにこうなってたから。だから暖は責任感じなくていい」
『そう言われてもー…やっぱり』
「だって暖の事憎んでたりしたら恋人役なんてお願いしないでしょ?」
確かに彼からダメージ一つ感じたことはない。相変わらず謎が多い彼は楽しそうに目を輝かせて話を進める。
「そうだ。名前はどうする?だって顔隠してる位だから、本名だって知られたくないでしょ?」
『名前、、考えてなかったな』
「付けたい名前ないの?」
『うーん、、あっ! NATSU ってどう?英語でNATSU!!』
「え、何でNATSU?」
『ハルだからナツ!さっきケーキ食べてる顔見て思いついた』
"春"だから"夏"なんて安易な感じもするけど、なぜか嬉しかった。それは多分ずっと隠れていたもう一人の自分の中の人格が、やっと外へ出られると疼いているようでそれを悟られないようにケーキを口に運ぶスピード上げる。
ともだちにシェアしよう!