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#スイーツ男子のお仕事はチョコミントアイスの冷たさと刺激と賛否の交わり③
「じゃ俺も合わせて英語でTAIGAにする、心機一転。それでいい?」
『うん、、いいけど』
「あーそれと給料なんだけどとりあえず最初は1動画3万円でどうかな?」
「さっ、さん、3万円!!?」
目をまんまると見開いてフォークを置いた。アルバイト経験のない暖にとっては、1日に3万円ももらえる仕事なんて考えられない。あったとしたらきっとヤバい内容に決まってる。
「えっ!?少なかった?」
『ちっ、違うよ!逆だよ。1つ10分ほどの動画に3万も、、もらいすぎじゃないかな、、いやでも!もらえるならありがたいけど……あぁでもやっぱりっ!』
「ちょっと暖。落ち着いてよ」
大我あたふたと落ち着かない暖の手を両手で包み込むように握るとぴたっと動きを止めて重なった手を見る。
「いいんだよ。暖にはそれだけの価値があるし、配信でファンがついたらもっと渡すつもりだよ」
『、、ファンなんて考えたこともないし…期待しないで。最低限の事は頑張るけどなるべく早く違う相手探したほうがいいと思う、、』
「ほらっまたそんなこと言う。俺が暖がいいって言ってるんだから素直に受け止めればいいの!」
彼はさらに僕の手をぎゅっと握ってまっすぐな瞳で見つめられる。彼と肌が触れ合うのも何度目だろう。スキンシップが多い彼は顔だけではなく内面まで本当の外国人のようだった。
『うん。じゃー… その金額で』
「OK!決まりね。うーんと初めての撮影は3日後でどう?内容はそれまでに決めとくよ」
『わかった』
人間は誰しも平等だなんてものは理想論で、現実は不平等だ。生まれ持った顔、身体、環境、才能。成長するにつれその全てを判断されふるいにかけられる。そして物心ついた時には、ある程度の上下関係や幸福度は決まっているのだ。
「けど暖の最初の恋人になれて嬉しいな〜」
『でも偽の恋人だからノーカウントだもん。それに暖じゃなくてNATSUの恋人でしょ。僕にはいない、、』
「ふーん。不満なら偽じゃなくたっていいんだよ。本物の彼氏になっても」
『、、っ!不満なんて言ってないっっ』
「そう?顔にはそう書いてあったけど」
『かっ、書いてない!』
「あはっ。冗談だってば!さっ、どんどん食べてよ。まだいっぱい冷蔵庫に入ってるんだ」
『まだあるの!?そんなに食べれない』
次々とスイーツを出しては食べる僕をスマホで撮影する。撮影を拒否するのを面白がってる彼は今までで一番いい笑顔をしていた。
結局終電がなくなるまで一緒にいた。深夜ポツポツとしか車が走っていない道路を二人乗りのバイクで帰り、何とか寝静まった家族には気づかれずに家に入り部屋に駆けこむ。
唯一起きていた愛猫がベッドの上に丸まってこっちを見ていた。食べきれず持ち帰ったスイーツあげるとペロペロと食べて"もっとちょうだい"擦り寄りながら甘えてくる。
「おいしい?それならよかった。その代わりこの時間に帰宅した事は家族には内緒にしてよ。いい?わかった?」
甘い口止め料に"にゃ〜ん"と返事を返して上機嫌な愛猫に抱きかかえて、よしよしと頭を撫でふわふわの毛に顔を埋めベッドに横になる。
いろんな意味で満たされた心と胃袋せいか気付けば眠りについていた。
翌日、しばらく休止していた配信アカウントが動き出した。しかし、過去の動画はすべて削除されていて空っぽの"Tigar channel"に1つの新着動画が上がっていた。
"お久しぶりです大我です。報告があります。新しいパートナーと配信を再開します。今まで見てくれていた皆さんには、いろんな意見があると思いますが前に進んでいきます。よろしくお願いします"
数分の短い動画だが反応は大きくすぐに再生数やコメントが増えていった。
偽の恋人2日目。
期間限定のカウントが始まった。
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