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#スイーツ男子のお仕事はチョコミントアイスの冷たさと刺激と賛否の交わり⑤

 「そうそう、それなんだけど。また配信再開しようと思ってそれの報告!」  「おっ!という事は例のやつに会えた訳か!?」  「そう、叔父さんのお陰でねー」  「ほらっ。俺の警察官時代の腕がまだ鈍ってなかっただろ!?」  修一は元警察官。サイバー犯罪捜査官としてIT技術やネットワークやサーバなどの知識を持ち合わせ、長くあらゆる現代ならではの犯罪に向き合ってきた。 そんな修一にとってはSNS投稿者の発信元や住所を特定するのはお得意。もちろん暖を見つけ出したのは修一の手腕だ。  しかし50歳を機にあっさり仕事を辞めた。夢のバイクショップをオープンさせたのは4年前。 険しい顔でパソコンの画面を睨みつけキーボード弾いていた指も、今ではバイクのハンドルを握り小さな部品を触る毎日だ。  「ほんとに感謝してるよ」  「それで!?どんな子だったんだ!?可愛かったか?聞かせろよーー」  「まぁ可愛いと言えばー…可愛かな?」  「んん〜元警察官の推理からいくとあの感じは女子大生もしくは美容系専門学生ってトコかっ!?」  そう言って自信満々に顔を近づけた修一に更に距離を近づけ大我は企んだような笑みを浮かべた。  「ファイルアンサー?」  「………ファイルアンサーだっ!!」  「、、、残念ーー!ハズレー!叔父さんもまだまだだねっ!やっぱり感が鈍ったんじゃない!?」  「くっそ〜!」  ふふっと笑った大我はポケットからスマホを取り出し写真フォルダを開いて1枚の写真を修一に見せた。それは暖が大我の家に来たあの日の写真だった。 スイーツがまるで生き物かように優しく丁寧に扱い、この上ない幸せな表情で口に運ぶ暖を見てなぜか残しておきたいと自然に手が動き隠し撮っていた写真。  「ほら、19歳予備校生。れっきとした男子だよ」  「へぇ〜確かに可愛い顔してるな。まったくイマドキの子は男か女かも区別がつかねぇな。名前にしろ撮る写真にしろ。俺なんかの時代はなー…」  「あーはいはい!叔父さん、もうその話はいいから!散々聞いたってば」    "出来ましたっ"部屋のドアが開いて、従業員が呼びかけた。ぺこっと従業員に頭を下げペットボトルを空にした大我。 部屋を出てオイル交換だけではなく、ボディーまでピカピカに磨かれていたバイクに満足気に触れた。  「ありがと、叔父さん!」  「そうだ大我、体調の方はどうなんだ?」  「あぁ、そっちならご心配なく。健康そのものだから!」  「まさか酒飲んだりしてないだろうな」  「叔父さん、あんな目に合ったんだよ?これでまだ飲んでたら、俺はどうしようもない馬鹿だと思う」  「そうだよな。お前は賢い奴だよな」  「それじゃ、行くね」    ヘルメットをかぶってバイクにまたがる大我に何か思い出したように慌てて手を掴む。  「おい、会計忘れてねぇか?」  「そんなわけで予想大ハズレだったからオイル交換代はナシってことでっ!」  「あっおい!!そんな約束してないぞ!」  修一の肩をポンポンと叩いて、ヘルメットのシールドを下げ手を挙げる大我。いつもこんな調子で上手く丸め込まれてもう慣れっこだ。  諦めた修一は"わかったから早く行けよ"っと手を2回払った。エンジンをかけマフラーから大きな音を出して走り去るバイクを見ながら少し安心感も感じていた。  「ったく相変わらず自由奔放な奴なんだから。けど新しい相手見つかって良かったかな。うまくやっていけるといいけどな」  何だかんだで大我を心配していた修一。今日の様子を見ると、心配いらないなと肩を撫で下ろし仕事に戻った。  

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