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#スイーツ男子のお仕事はチョコミントアイスの冷たさと刺激と賛否の交わり⑥

 いよいよ初撮影の日。 テキパキとセッティングを始める大我をただ見つめ見慣れない撮影機器を不思議そうに眺めている暖。  目の前には撮影用カメラにテレビの世界でしか見ない照明機器など値段の張りそうなものが並んでいる。それが緊張感を更に高ぶらせて、ソファーの端っこに座り苦い顔をしていた。 そんな様子に気付いて、ププッと小さく笑いながら隣に座り暖のほっぺを突っつく大我。    「ちょっと〜そんな受験当日みたいな顔しないでよ」  『だってぇ、、こんなの初めてなんだもん。緊張するに決まってるじゃん』  「今日は別に最初の挨拶動画みたいなもんだから気楽に。決まった台本もないし俺が話すから何となく聞きながら合わせてくれればいいよ」  『うん、、わかった』  「よし!じゃこっち来てっ」  そう言って、暖の腕を引いて隣の小さな部屋に行くと、いろんな機材や小道具を置いたいわば物置の様な部屋。そこにあるクローゼットを開けると服がずらりと並んでいた。  「うーん。今日は初回だし少し色明るめでもいいかなと思うんだけど」  『……ん?どうゆうこと』  「えっ!そのままの服で出るつもりだったの?」  『あっいや特に気にしてなかったけど、、え?そんなに変?あっ、や、やっぱりカメラに映るならそれなりの服装にしなきゃだったよね!?』  「いや変とか高級な服じゃなきゃいけないって事はなくて、ただ着慣れてる服だと顔隠しても周りの知り合いにバレちゃうじゃない?」  すっかりそんなこと頭から抜けていた暖はファッションに関しては無知で無頓着。大体5着ほどの色味ない似た様なグレーや黒の洋服を着回している毎日。  『、、それは困る』  「でしょ。だからいくつか用意しといた。気になるものあったら着てみて」  『うん……じゃぁせっかくだし着てみようかな』    クローゼットの中の洋服たちはそんな暖が自分では絶対に手を出す事はない色や柄や形をしていて目を忙しく動かし細かく吟味している。  『じゃぁー…これ着てみる』  「OK!上下あるから合わせて着てみて」 そう言って腕を組んでじっと見つめる大我の視線にたじろぐ暖は咄嗟に背中を向けた。    『でっ、、出ていかないの?』  「ん?別に男同士だし裸くらい……」  『ダっ、ダメッ!見せられるような身体じゃないし、、恥ずかしいから』  「あーはいはい!わかったよ乙女な暖くん!着たい服決まったら隣の部屋来て」  『うん。わかった』  パタンと扉閉めて出て行った大我。フゥと息をを漏らし鏡の前に立って着替え始める。 袖を通していく内に、鏡に映った別人のような自分の姿が映る。そしてじっくり上からつま先までゆっくり見ると、回って後ろ姿をチェックしたり横を向いて顎をあげてみたりまんざらでもない暖。 しばらくして部屋から出てきた暖はゆっくりと大我の前に立った。  「ん!暖いいね。どう?いつもと違う洋服を身に着ける感じは?」  『何かまだ恥ずかしいけど、、悪くもないかな』  「慣れたら恥ずかしさもなくなるから大丈夫!あっけど恥ずかしがってるのが暖の持ち味でもあるからそのままでいて欲しくもあるけど」  『何か難しいね、、それ』  「無理に自分を変えようとしなくていいってこと!そのままの暖でいてくればいいから」  『そのままの僕……?』  「そう。見た目や名前は変えても中身まで変える必要ないんだよ。それじゃ暖を選んだ意味がなくなる」  そう言って彼は僕の長い前髪をそっと分けてしっかり瞳を合わせた。彼がくれた着慣れない服、向けられるカメラ、別人の名前。  全てが今まで生きてきて触れてこなかった世界。そこへ飛び込もうとしている僕の心境は意外にも不安や心配などではなく、この世界に触れてみたいたいと思う好奇心だけだった。  偽の恋人の彼に今は身も心も預けてまだ見ぬ自分に出会いたい、、そう思った。

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