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#スイーツ男子のお仕事はチョコミントアイスの冷たさと刺激と賛否の交わり⑨
この青い数字と英語の羅列を見ているとすぐにでもに触れたくなるけど、今ここで動画を再生するなんて死んでもできない。
とりあえずこの授業が終わるまでは我慢。スマホをカバンに入れてなるべく意識を前の黒板に向けた。1分1秒がすごく遅く感じて、机のノートには無意識のうちにペンで何やらわからない殴り書きをして気を落ちつかせていた。
そしてチャイムが鳴り授業が終わるとともに、開いた教科書もそのままに立ち上がってスマホを握った。
『あー!ちょっとトイレ行ってくるっ!』
「えっ、あぁ。俺も行きたいねん、一緒にー…」
明希の言葉を耳に入らんとばかりに凄いスピードで教室から出て行った暖を明希はぽかーんと見ていた。そんな明希の横に寄ってきていつみも何事かと肩を並べて見ている。
「えっ!暖どうしたの?」
「わからへん。トイレ行く言うて出ていきよった」
「ねぇ見てよこのノート、、大丈夫?何か情緒不安定なの?明希、何か聞いてる?」
「俺も知らん。んー…もしかして今朝担任が言うとった夏季講習の件か?いや、暖がそんなこと別に悩まんか!?」
「それどういう意味よ。暖が勉強のことで悩む訳ないって?」
「ほな他に暖の悩むようなことって?」
「さぁ?私しーらないっ!明希聞いてみてよ」
「俺がっ!?まーええけど、、」
教室でそんな会話がされているとも知らず、いくつかあるうちの教室から遠いトイレに行った暖は中に誰もいないことを確認し一番奥の個室に入って鍵を閉めた。2人の予想を裏切らない暖の頭の中はもちろん勉強なんかではなく動画のことでいっぱい。
立ったまま大我からのメッセージを再び開いた。
『あ、、イヤホンわすれちゃったな』
急いで教室から飛び出した為、イヤホンなど完全に忘れて仕方なく最少ボリュームにしてURLをポチッと押した。
現れたのは間違いなくあの日に撮影した動画。
動画公開から、40分ほど経過していてすでに動画再生数が一万を超えている。
とてつもないスピードで、見る人の関心を引き寄せるチャンネルだと改めて感じた。しかも自分自身が写った動画が世に出回って見られていると言う現実が初めて味わう何とも言えない感覚に襲われる。
もちろん視聴すれば感想や意見がリアルタイムで書き込まれ良くも悪くも誰でも目にする事が出来るのが動画配信の世界。
"顔見たい!なんで顔出しNGなの?"
"やっぱりマコトがいいな。二人お似合いだったもん"
"そんなに期間経ってないのにすぐ相手見つける大我すごいけど遊びじゃなくて本気なのかな"
"まぁ別に相手は誰でも大我が見れればそれでいい"
コメント一つ一つが胸に突き刺さる。もちろんはなから期待はしていない。それでも少し位の喜べるコメントがあると心のどこかで思っていたから胸がチクリとするのかもしれない。
『いきなり違う相手と恋人同士です、これからはこの二人の日常見てくださいなんて……簡単に受け入れるなんて無理だよね、、』
無色透明な僕のような人間に大我は交わる事のない色をしているのはわかっていた事。それでも少し期待した自分がいた。自己満足で数百人に向けて気ままにスイーツを安心していたアカウントとは全く違う。
7分の動画の中の偽の恋人を演じている二人を受け入れてもらうのは容易な事じゃない。大我はこんな世界に何年も生きてたんだ。
それを今ひしひしと感じて壁に持たれスマホを閉じてしばらくそこを動けなかった。
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