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#スイーツ男子の欲望はラスクの硬さと砕け散る弱さに似て②
『いっ、一応恋人って設定だし、、普通に恋人に接するようにしてくれていいよ。今までの恋人と同じようにする事とか、、』
「恋人同士でする事って?例えばデートとか?」
『うん、まぁそれもだしー…』
暖は視線を逸して上半身を起こした。躊躇しながら話す、いつもと様子が違う暖の背中を大我は寝そべってまま一言一句聞き逃さないよう静かに聞いている。
『…………キスとか』
「えっ、、暖どうしたの?」
『僕は大丈夫だよ。大我が相手なら!だけどー…経験ないし、うまくできるかわからないけど」
腹を括って絞り出すように言った暖に少し戸惑いながらゆっくり起き上がって肩を並べ、暖のかぶっていた帽子とマスクをそっと外して乱れた髪を整える大我。
「そんなに焦って完璧にしようとしなくていいんだよ。まだ始まったばかりなんだし」
『ッ、、無理なんかしてない。見てる人にちゃんとカップルって認められたいんだ。偽物だとしても……』
「そう、、じゃあさキスの練習する?今から」
思わぬ発言に驚いた暖が見た大我は冗談をなんかじゃない真剣なそして少し意地悪な瞳をしていた。
「ねぇキスって種類あるの知ってる?」
『えっっ、、うん。なんとなく』
「じゃあどっちがいい?簡単なキスとー…難しいキス」
少し濁した言い方で問いかけた大我。いくら経験のない暖でも19年生きていればそれぐらいの事はわかる。首をかしげてどちらか選べと選択を迫る大我はまるで獲物を見つけた豹のように、ジリジリと距離を縮めて今にも食われてしまいそうな暖はまるで子鹿だ。
『……難しいキス、、かな』
「暖からそんな事言うなんて、意外に悪い子なのかな?でも俺そうゆうの嫌いじゃないよ」
余裕を見せる大我に対し自らこの状況を作り上げた暖は石のように固まっている。だけど大我は簡単には終わらせてくれない。とっくに張り裂けそうな心臓を正常に保つのに必死な暖を面白がっている。
「でもキスの前にやる事あるよ」
そう言って暖の身体を自分の方に向け優しく抱きしめた。いつかバイクの後部座席で感じた背中の一方的な温かさのは違う、求め合う温かさに安心と愛おしさが溢れる。
フローラルの香りはシャンプーなのか柔軟剤かそれとも勝手に作り出した想像の香りか、だとしたら僕の中でまだ大我の存在は不透明で遠い存在。
「キスだけなら恋人じゃなくてもするけど、抱きしめるのは愛がなくちゃしない」
『……そうなんだ。それなら今抱きしめているのは恋人だから?』
「そう。暖が恋人だから」
"NATSU"ではなく"暖"呼んだ大我の心情は不明だが認められたと言う気持ちが強くて、そんなことどうでもよかった。
そして背中に回した手を肩に移動させると唇に視線を落とした大我の茶色の瞳が今までで一番近くに見えて僕は目を瞑った。
キスをすればー…大我に認められる。
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